豊島逸夫の手帖

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貴金属セクター、久々の急反落

2025年10月20日

米信用不安が勃発して買われた後で、先週金曜日には急反落となった。
KITCOグラフの赤線、緑線がその下げっぷりだ。

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と言っても1年グラフで見ると、ちょっぴり頭が叩かれた程度だけどね。

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それでも連日のように高値更新が続いていたから、筆者は下がってホッとしている。
健全な調整だよ。
これまでの連騰があのまま続いていたら、間違いなく市場では金バブル論がここぞとばかりに噴出していただろうね。その意味で金曜日は「冷やし玉」とでも言おうか、熱狂感に冷や水を浴びせる意味があった。

背景としては、米地銀信用危機と言っても経済ショックを引き起こすほど地銀決算は悪くない。金曜日のNY時間オープン直前に米格付け機関のアナリストが米CNBCテレビに生出演して「問題ない。One-off一回ぽっきりの異常だ。」と語っていた。

筆者の見解は以下。中長期的問題として、ノンバンク部門が隠し債務やインボイスファイナンス(請求書を担保の借り入れ)を見抜けなかったことが重要で後を引く。地雷が至るところに埋まっているということだ。だからこそJPモルガンのダイモンCEOが「当行も若干、見落としがあった。ゴキブリ一匹見つけると、必ず数匹いるものだ。」と述べたわけだ。

総じて、直ちにリーマンショックの如き危機的状態になることは考えられないが、いつ何時新たな信用不安が勃発しても不思議はないということだ。ノンバンク経由(プライベートクレジット)で数兆ドルが流れているとされる。

金市場に関して言えば、ドカ雪の如く積み上がった投機的買いポジションが自重に耐えかね、新雪表層雪崩を引き起こしたものの、根雪の部分はファンダメンタルズに支えられ、しっかり残る。

今の金市場には「conviction buyer 確信派」と「opportunistic buyer ひよりみ派」が同居するが、今回のような下げ局面で後者がふるい落とされ、結果的に金の長期上昇相場は堅固になってゆくと見る。

なお、高市首相誕生の可能性が高まり、日本株は盛り上がっているね。金に関しては円安っぽいので、円建て金価格にはプラス要因。NY市場では国際金価格に影響を与えるほどの重要要因ではなく、軽くスルーされている。

妥協の連立の結果の高市政権。前途は多難。日経平均5万円も考えられるが、所謂「市場の蜜月期間」が終われば株式市場では厳しい洗礼が待ち受けていよう。

さて、昨日はTBS系「サンデーモーニング」で金特集。「古い金ジュエリー売って大儲け」のパターンではなく、まともに金についての説明を試みていた。筆者のコメントもまともに紹介されていた。地上波の視聴者の多くは金に関しての知見が著しく低いので、相変わらず「プール4杯分」の話から入った。振り返ってみれば、筆者が1989年ワールドビジネスサテライトで金について語った時、やはりプール何杯分とか語った記憶がある。当時のキャスターは小池百合子氏(当時はユリ子氏)。その時も昨日も「プールX杯分」。未だに一般視聴者は「ホー」と感嘆。私の感想は「金の啓蒙、先は長いな~」。友人たちは「豊島のプールX杯の話は聞き飽きた。よくそのネタで何十年も仕事してるよな。」筆者はこう切り返す。「私は細川たかしの大ヒット曲「心のこり」(私、バカよね)が好き。ただ、歌っている本人が飽きてしまって、今は色々アレンジして歌っている。でも私は彼がススキノのキャバレーで歌っていた頃の、あのオリジナルの歌い方が好きなんだよな~。」金の話もアレンジは禁物(笑)。

2025年