豊島逸夫の手帖

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金とプラチナの違いとは

2025年8月20日

今日は改めて金とプラチナの違いについて考えてみよう。

1)金は産業用・宝飾用にも使われるが、主要な需要は投資用。更に中央銀行の外貨準備としての購入である。
対して、プラチナは自動車排ガス浄化触媒と宝飾に使われる。外貨準備でプラチナを買う国はない。

2)プラチナは景気後退や物価上昇(インフレ)が起きると実需は減るが、金は景気後退局面で「安全資産」として資産運用の対象となる。

3)市場規模がプラチナは金の1/20である。それゆえ希少性はプラチナの方が高いが、市場が小さいので、投機マネーの影響も大きく受けやすい。
では、今後のプラチナ相場はどうなるか。

キーワードはスタグフレーション。景気後退と物価上昇が同時に起こる現象だ。ここは金の独り勝ちと本欄では繰り返し書いてきた。然るにプラチナはスタグフレーションになれば、実需は激減する。

更に、金は外貨準備として年間1000トンペースで買われている。国が自国の経済安全保障のために購入するので、30年、40年と長期に亘り保有する。退蔵と言って良いであろう。それゆえ金価格の価格レンジは退蔵された分だけ確実に切り上がる。

然るに、プラチナの購入主体はプラチナを退蔵せず、産業用・宝飾用に使い、更にここが重要なことだが、ヘッジファンドの投機売買の恰好の標的となる。市場が小さいので価格が大きく乱高下するからだ。今年はプラチナ価格が1000ドル前後の水準から短期間に1500ドル近くまで急騰した。価格が短期間で5割も上がるほどの需給の大変化があったのか。南アの鉱山の生産に障害が生じたことや、中国の一部の人がプラチナを買った程度の話で、5割も価格が上がることは考えられない。実態はヘッジファンドなどの投機買いだ。「プラチナ実需逼迫」を囃し、一般投資家の買いも誘い、首尾よく5割近くもプラチナ価格を強引に引き上げたところで、一転、利益確定売りに転じた。これが現在のプラチナ市場の実態だ。未だ、高値掴みした投資家・投機家が逃げ遅れて焦っている。

更に、プラチナを既に長く保有してきた人たちからは「やれやれ売り」が出始めた。彼らにとっては千載一遇の売り処分のチャンスと映る。

筆者は本欄で繰り返し述べてきたように、プラチナが個人的には大好きである。しかしプロとしては、ここは冷静に現実を見なければならないと自戒の意味も込め語っている。プラチナ需給の数字がPR機関による調査であることもはっきり言って気にいらない。

結論として金は2026年には4000ドルを試すと思うが、プラチナは1000ドルまで、つまり以前の常態まで戻る可能性がある。

それでもプラチナの持つプレミア感は変わらないであろう。プラチナカードのステータスはゴールドカードより格上が当たり前なのだ。それで良いではないか。中国人の金に対する文化的選好度の高さも変わらない。銀色好きの中国人もいるが、紀元前4世紀から金貨が使われてきた歴史的事実は重い。その詳細は以下に纏められている。

中国黄金文化

2025年