2025年3月21日
2024年はFRBが適度な物価上昇と雇用を実現させる「ソフトランディング」(経済軟着陸)がNY株式市場で囃され、ウォール街に年間流行語大賞でもあれば恐らくトップになるほどであった。それが2025年トランプ政権の時代となるや市場の景色が激変。ソフトランディングなど「懐かしい昔話」と化し、経済の軟化を意味するソフトエコノミーが今年のマーケットリスクとして急速に浮上中だ。
ソフトと言えば、米国経済指標もGDPや雇用者数などの「ハードデータ」より、ミシガン大学消費者信頼感指数などの「ソフトデータ」の悪化が懸念されている。
3月FOMC後のパウエル議長記者会見でもソフトエコノミーの実現性についての質問に「基本シナリオは外的要因による一過性(transitory)の物価上昇を排除せず。」と答えた。その瞬間にマーケット関係者の頭をよぎったのはコロナ後のインフレをパウエル氏が頑固に「一過性」と論じ、痛恨の判断ミスを犯したことだ。FRB経済見通しについても「現在のように極めて不確実性の高い経済環境で予測を変えるということは率直に言って無力感もある。長期的な見通しは変わらずという程度にしておけば無難だ。」と本音をちらつかせた。公の席で無力感(inertia)と言う単語を使うことは異例だ。そうあっさり言われてしまうと市場の合言葉も「FRBには逆らうな」から「FRBを疑え」に急変してしまう。
今回は3か月ごとに発表されるFRB経済レポートも発表され、特にFOMC参加者の金利見通し分布を示す「ドットチャート」が特に注目された。中心値が年内利下げ2回ということを特に報道されたが、「関税インフレ」の影響を誰も予測できない時点での金利見通しなど、それこそ「無力感」に満ちた数字と受け止められてしまう。
結局いつものように「データ次第」、特に「トランプ経済政策次第」ということになろう。
そのトランプ氏は「FRBは金利を下げた方が遥かに良い」とSNSを通じて吠えた。
ご心配なく。あなたの関税政策などで景気後退は不可避の情勢ゆえ、少なくともあなたも認めたとおり「移行期間中」は金利が下がり、お望みどおり「ドル安」圧力も強まりますよ。
但し、インフレと景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」の可能性が強まる場合に誰に責任転嫁するか、今のうちから考えておいた方が良いですよ。
そして、あなた個人のポートフォリオに自分が引き起こすリスクヘッジのために、金をしっかり持っていますか?(笑)