豊島逸夫の手帖

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メガ級の金上昇要因、登場

2025年5月19日

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来たか!と言う感じ。ムーディーズの米国債格下げ発表。

伏線はあった。先週、米10年債利回りが4.5%と「米国債の乱」以来の水準に急騰。NY市場では謎の金利急騰と話題になった。今にして思えば「ムーディーズの情報がリークされていたのか」などの憶測さえ市場を駆け巡る。本稿執筆時点(19日月曜朝)、時間外のNY市場(GLOBEX)で既に60ドル高、3240ドル台まで急騰中。本番のNY市場に注目だ。ドル円は145円台で推移中。
いずれにせよ金価格には強い上げ要因だ。リーマンショック後、金価格が当時の史上最高値1900ドル台をつけたのも、米国債格下げが決め手となった。

更に、本欄2023年10月20日付けでも当時の2000ドル視野の要因のひとつとして詳述されていた。

以下引用

国際金価格1970ドル台、2000ドル視野に  

2023年10月20日

4)更に、NY市場でのドル金利上昇の理由のひとつが米国債への信認低下、場合によっては米国債格下げの可能性にあること。米国債増発が必至だが、それを誰が買ってくれるのか。FRBが量的緩和で買ってくれていたが、今や量的引き締め(QT)に転じ、米国債の売り手に回っている。しかももうひとつの米国債巨額保有者の日本と中国が最近の傾向として米国長期債保有を減らしている。買い手が不足する米国長期債は利回りを上げて買ってもらうしかない。これを専門用語でタームプレミアムという。総じて米国経済、米ドルへの信認が低下している。

引用終わり

かくして調整局面に入っていた金市場に、新たなメガ級のサプライズ要因登場。これで再度3500ドル挑戦のモメンタムが醸成されよう。

なお、米国債への信頼低下現象は筆者が学生時代に既に国際経済学で「トリフィンのジレンマ」というエコノミスト用語により指摘されてきた、実に歴史の長い問題だ。米ドルが国際決済通貨として世界で使用されるためには、米国の対外収支が赤字(ドル流出)になる必要がある。
しかし、この赤字要因は「国際基軸通貨」としての米ドルへの信認を低下させる。

現在の米国財政要因としては財政赤字膨張も重要で、所謂「双子の赤字」と呼ばれてきた。
トランプ経済政策、特に減税が中間選挙向けに語られてきただけに、トランプ氏のイライラ感が格付け会社批判という形で顕在化するであろう。

2025年