2025年6月12日
本日の3日間価格グラフはプラチナである。1270ドルまで急騰中だ。長らく900~1100ドル程度のレンジで推移してきたプラチナが上放れた。本欄で書いてきたように、筆者はプラチナに愛着があるゆえ、ハッピーなのだが解説役に回り冷静に見ると、投機主導の上げで素直に喜べる実態ではない。
主因は中国の買いとされる。確かに、金に比し割安感があるプラチナジュエリーは一部の中国人富裕層に人気だ。しかし、このセクターの買いだけで現在進行中の急騰を説明することはできない。要は「中国買い」を錦の御旗に、短期的売買で一儲けを目論む輩がプラチナ価格上昇を増幅させているのだ。
プロの間では「プラチナは現物を持った者勝ち」と言われる。じっくり持っていれば、いずれ「神風」が吹いて現物不足が生じ、リース市場には「プラチナ現物を持っていないのに空売りを仕掛けた」連中が真っ青になって殺到。現物を持つ貸し手は、借り手の足元を見て法外なリースレートを吹っかけ大儲けができる。
今回は「中国の買い」をプラチナ販売促進機関が吹聴したことに阿吽の呼吸で投機筋が乗り、買いに拍車をかけた。結果的にショートスクイーズ(空売り締め上げ)のような現象が起こったわけだ。
筆者は上海黄金交易所創設時にアドバイザーとして招聘され、更に中国工商銀行貴金属部の顧問役も務めた。更に中国の金鉱山も訪問しており、中国の金市場の実態は手に取るように分かる。
日本ではプラチナの地金や宝飾品を売り戻す動きが顕在化しているが正解だと思う。
今後の中国市場で注目されるのは同じ貴金属でも「銀」。
中国経済が減速する中で個人消費が痛み、春節には「買わねばならない」金製品も単価が下がり、更に「貧者の金」と呼ばれる「銀」で代替する傾向も強まっている。中国の銀行の貴金属部でも売れ筋は銀1オンスのメダルだという。
金持ちは「プラチナ」、庶民は「銀」。
勿論「金」が主役の座は揺るがないが、貴金属セクターとしては徐々に変化が生じているのだ。