豊島逸夫の手帖

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災害と金

2025年12月9日

大地震と言えば、思い出すのが阪神・淡路と東日本の大震災。

まず、阪神・淡路大震災の時のエピソード。
焼野原と化した神戸付近を、とある年配の女性が必死に探し回っている様子がたまたまテレビに映った。ほどなくして探し物があったようで、黒焦げの壺らしきものを抱え、中を必死に探っている。「アッタ!」の声。女性の手には焦げているが輝く金貨。大震災にも耐え抜いたゴールド。まさに有事の金。

それから同じく震災を体験した大阪の旦那衆と見られる人のエピソード。
絵画骨董の趣味があるらしく、しみじみ呟いた。
「絵は燃える。器(うつわ)は壊れる。女は逃げる。金は残る。」
まさに金の本質を突いた名言。

次に、東日本大震災。
漁師さんは大漁の時、金を買い、家庭用金庫に保管しておくことが多い。
それが大津波で流されてしまった。

更に、金地金を持って逃げたが、避難生活でセブンイレブンに行っても金地金で買い物はできない(将来はゴールドステーブルコインならばできることになるかも)。

そして、外為市場では円のレパトリ=円高が進行した。

なお、究極のエピソード。NY同時多発テロの時に崩壊した超高層ビル(ワールドトレードセンター)の地下6階にCOMEXの取引所在庫として金現物6トンほどが保管されていた。それを知っていた筆者がビル崩壊の惨状をテレビで見つつ、「あの金塊はどうなったのだろう」と不謹慎にも考えてしまった。その後確認したのだが、なんと6トンきっちり残っていたのだ。さすがに表面はへこんでいたが、重量に変化なし。これまた有事の金の事例と言えよう。

いろいろ思い出しつつ、感慨深い昨晩のことであったよ。

2025年