2025年5月20日
昨晩のNY市場では、外電で石破首相の「日本の財政状況はギリシャより悪い」との発言が伝わり話題となった。日本国債の主たる所有者は日本人で、外国からの借金依存体質ではないとされるが、永田町で財源の見えないバラマキ政策が議論されている状況では、海外投資家の視点では(円高による為替差益を考慮しても)日本国債にもうっかり手を出せない。
では、あのお堅い国のドイツ国債はどうか。この国も伝統的な財政規律を緩め、積極財政の方向に歴史的舵を切ったばかり。もはや主要国の国債が「安全資産」と言いかねる状況だ。
だからこそ「金」という話になるわけだが、昨晩のNY金市場では金価格上昇が限定的であった。米国債格下げは既に米格付け大手2社が昨年決定しており、最後に残ったムーディーズが追随しても織り込み済みというわけだ。
とは言え、財政赤字問題はパウエル議長の言うとおり「サステナブルではない」、つまり維持不可能ということだ。今後ジワリ効くことになろう。
さて、日本人の立場で日本国債を保有することは賢明な資産運用と言えるのか。
それに対する最も明確な答えがある。
筆者の周りには日本国債の司令塔である財務省出身のOBたちがゴロゴロしている。彼らは退官して一国民の立場になると「日本はいずれジンバブエになる」と平然と言い切る。日本国のバランスシートを担当してきた人が、虎の子の退職金で日本国債だけは持ちたくないというわけだ。これは怖い話。所謂「陰謀説」を語る本の作者とは違い、現場出身の人物たちの話ゆえ説得力がある。
とは言え、日本国債は日本の金融の世界にしっかり組み込まれており、現役組で公職にある立場では、今更「嫌だ」とはゆめゆめ言えないことだ。タブーと言えよう。だからこそ「ギリシャより悪い」との発言がNY市場で注目されたわけだ。