豊島逸夫の手帖

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トランプリスクの注意点を解説

2025年3月13日

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金価格は順調にロコ・ロンドンで2940ドル台まで来た。ひとえにトランプリスク(以下に詳述)に尽きる。個人的にはじっくり時間をかけて2900ドルを固めた上で3000ドルに到達して欲しいところ。まぁそう思いどおりにはゆかないことが多いけどね。贅沢な悩みというものだ(笑)。

さて、以下は筆者の見るトランプリスクに関する論文。

自由貿易理論は「譲歩の精神」を前提に成り立つ。各国が「比較優位」を持つ得意分野にリソースを重点配分して、不得意分野は他国に譲る。その結果、世界経済のパイが増える「拡大均衡」になる。
対して、保護主義が席捲すると自国が比較優位を持たない分野まで関税で守り、更に売られた喧嘩を買うと言わんばかりの報復関税を発動。その結果、各国の経済が痛み、マクロで見た世界経済は「縮小均衡」に陥る。そのような経済環境で長期の世界的株価上昇は望めない。長期積立のNISA投資家にとっては「悪魔のシナリオ」である。オール・カントリー(世界各国)の景況感が悪化すれば、主力NISA投資商品からどれほどのリターンが期待できるのか。そもそもNISAは「投資の利益」への課税を優遇する制度だが、「損失」となれば「優遇」どころではない。
個人投資家からは「トランプ政権の4年間は、NISA投資を中断したい」などの本音が聞こえてくる。

以下は筆者のトランプ政権に関する諸々の所感だが、まず今回のNY株式市場では「万年ブル」と言われた著名投資家まで言葉を濁す異様な風景が展開されている。株価下落の恐怖というより、トランプ氏の本音が読めないので、モメンタム(勢い)に乗って積極的に売買するアニマルスピリッツが明らかに萎えている。

一般的に相場に絶対はないと言われるが、トランプ氏の本音を正確に読める人は絶対に世界に誰もいない。何せトランプ氏がどうなるか読めていないのだから。

更に、トランプ氏の取り巻きからの雑音もやかましい。ベッセント財務長官は「トランプ・プット」は期待できないと市場に釘を刺した。今回は「トランプ・コール」になろうと言う。株価が下がった時の助け舟がプットで、株価が上がった時きに流れを囃す応援団となるのがコールというわけだ。

加えて、財政政策の司令塔であるベッセント氏と通商問題を司るラトニック商務長官の不仲も顕在化している。そもそもラトニック氏は財務長官ポストを狙っていたが、ベッセント氏がフロリダのトランプ邸に陣取り、首尾よく財政長官ポストを手にして、ラトニック氏が地団駄を踏んだなどと報道された経緯がある。ライバル関係からかなり激しい言葉が交わされたと言われる。株式市場でこの二人の相反する如き発言が流れた場合にマーケットはかなり混乱しよう。日本流にいえば「殿、ご乱心」と将軍を諫める老中がおらず、マスク氏含めて老中の間では感情のもつればかりが目立つ。出入り業者の政商たちを想起させる米大企業トップの多くもトランプ氏が同席しない場でうっぷんを晴らす如き言動が目立つ。

最後に、対中強硬派のピーター・ナバロ氏も通商担当大統領補佐官という肩書で滑り込み最後の入閣者となったが、ホワイトハウスの司令塔オーバルオフィスの内部に陣取り、トランプ氏との物理的距離が近く個人的信頼も厚いので要注意人物とみて、筆者は言動をフォローしている。

2025年