豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 米利下げ観測後退の影響が拡大中
Page4193

米利下げ観測後退の影響が拡大中

2025年11月17日

4193.gif

FRBの金融政策の影響が顕在化しつつある。
これまで米労働市場の悪化を下支えするため、12月FOMCは利下げに動くとの観測が支配的であった。12月利下げ確率も90%を超えて、市場では織り込み済みとされた。

ところが、その後FRB高官たちが講演などで、雇用よりインフレの方が懸念材料と語り始め、粘着質のインフレを本気で年率2%目標値まで下げるには利下げなど論外と言わんばかりの展開となっている。雇用と物価の安定は中央銀行の使命だが、両方を同時に満たすのは難事である。

その結果、現状では12月利下げ確率が43%にまで急落した。
これほどに確率が大きく変動するのは稀だ。
背景として、米政府機関閉鎖が長引き、雇用統計・CPIなど重要経済指標も発表が遅れ、FRBとしても「データ次第」の金融政策決定が難しくなっていることが指摘される。

市場への影響も利下げ期待で上がってきた株価と金価格には逆風。外為市場ではドル高円安に振れ、160円説まで出始めた。

国際金価格については、先週は基本的に上昇基調であったが、金曜になって売り込まれた。結果的に調整期間が長くなり、これは後々の事を考えれば良い現象と筆者は見ている。あっさり4000ドル台が値固めされてはしっぺ返しの可能性が強まるからだ。円建て金価格には円安の影響が寄与するであろう。

なお、話題は変わるが、中国が対日姿勢を硬化させていることは筆者が懸念していたことであり、かなり心配している。

個人投資家も改めて「アジアの中の日本」を体感することになろう。台湾有事という地政学的リスクが日本人投資家の金買いに拍車をかける可能性ありと見ている。「金は持っていて役立たないのが一番」と常々語ってきたが、本件は本当に役立って欲しくない。

さて、金についてのYouTubeを公開してみて、アクセス数は良いのだが、総じてYouTubeの世界では、地味に貯める感覚で金を買うことがあまり共感を呼ばない感じだ。「一攫千金」狙いの若手の投機家が、ギラギラとした感覚で金に興味を持っている感じ。そのような世界で筆者の自説をあくまで曲げずに通すことはエネルギーが必要なようだ。

ブログ読者ならお馴染みの「金貨アルバム」の話も、嫁ぐ娘を思う母の気持ちはスルーされ、「それって脱税!?」との反応が目立った。確かに金貨の価値も大きく値上がりしたので税の問題は大きくなろうが「センチメンタルバリュー」を全く感じないというのはいかにも寂しい。

まぁ忍耐強く、YouTubeの世界でも金啓蒙活動を続けてゆくよ。
二本のYouTubeだけではとても語り切れないし。
他の金のYouTubeも見たが、俄か金専門家が増えていることをここでも体感。論調を見るに株がバブルっぽいので、金を勧めている様子。ヒラリと姿勢を変える術はお見事(笑)。

2025年