豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. トランプ氏は米国の公的保有金を売却するか
Page4027

トランプ氏は米国の公的保有金を売却するか

2025年2月19日

4027.gif

国際金価格、ロコ・ロンドンで2910ドル台から2930ドル台まで続騰。NY金先物(4月もの)は2950ドル台まで上昇。
もう材料は出尽くしたが、出遅れ組があまり下げ余地がないと見て、現価格水準を受け入れ、新規買いを入れつつある。

さて、トランプ政権から「米国の保有する公的金(概ね8133トン)を売却して、得たドルを売却して、円など他通貨を買い、外為市場でドル安・円高・ユーロ高を実現させる」というような案が議論されている。
しかし、米国が保有金を売却し始めたら即金価格は暴落するであろう。それで一番損するのは金最大保有国=米国である。従ってこれは現実味が薄い。

更に、米国公的保有金の評価問題も表面化している。8133トンの簿価は1972年以来変わらず42ドル。これを時価(2900ドル)で評価すれば7600億ドルの評価益が出る。これにより膨大な米国財政赤字を一気に解消して、(少なくとも帳簿上では)財政正常化が実現できるのではないかとの議論である。

更に更に、今やトランプ陣営重鎮のマスク氏(DOGE=政府効率化省のヘッド)が「米国の公的保有金8133トンほどが本当に実在するのか」と疑義を呈している。フォートノックスとNY連銀に預託されているはずだが、誰か正式に総額を確認しているのか。そう言われると誰も確実にYESとは言えないのが実態だ。「監査」が無理なら、せめてフォートノックス内の金塊の山をライブのYouTubeで見せろなどの議論に発展している。

実は、似たような話が以前ドイツであった。ドイツ国内の民間団体が「ドイツの公的保有金は本当に実在するのか」と声をあげたのだ。そこでドイツ連銀は預け先とされるNY連銀、イングランド銀行、そしてパリ国立銀行からドイツ保有の金塊を全てフランクフルトに空輸して現地で確認した。史上最大の金塊輸送作戦と囃されたものだ。

米国の場合は8133トンほどの公的保有金の全てが米国内に保管されているので、棚卸しは比較的容易にできる。間違っても何処かの貸金庫に保管されていることはないからね(笑)。

かくして、一般的に今や金が話題になることが増えているが、一夜漬けで金について勉強した有力者が途方もないことを言い出す事例が目立つ。それを報道する方も勉強不足で「NO!」と言えない。

今後も明らかにおかしな情報が金市場に流されることが増えそうなので要注意。

2025年