豊島逸夫の手帖

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金急騰をFOMOで説明することの危うさ

2025年10月31日

ワールドゴールドカウンシルは今回の金需要急増を「取り残される恐怖」英語でFOMO(fear of missing out)との用語で説明する。「皆が金を買っているようだから、私も買わなくては。」という横並び意識の金買いだと言うのだ。この用語は株の世界でも使われる。

しかし、FOMOを金買いの要因と決めつけるのは違うと思う。
家族の一員が、或いはお隣さんが、或いは職場の同僚が金を買って大儲けしたらしいので、私も負けずに買わねばという投資家心理は最も危うい。

ひとたび皆が売りに動けば、非常口に殺到するか如く、売り一色になるリスクを孕むことになる。
これは投資ではなく投機だ。

筆者が今年の金買いを説明するならば「金がアセットクラス」として認知されたことが最も重要であるということ。これまでは漠とした「安全資産」というカテゴリーで、逃避資金の駆け込み寺の如き存在とされた。有事に逃げ込むので、有事の金とも言われてきた。

然るに、今回はNY市場を見るに、金をひとつのアセットクラスとして組み込む金融商品が相次いで発売され、良好な成績を収めて、バンク・オブ・アメリカの機関投資家サーベイでも今年の人気商品のひとつとしてランクされている。リスク分散運用の有力な商品として見做されているのだ。これをFOMO程度の用語でひとっからげで説明するのは無理筋であろう。なお、お手本のような金組み入れファンドのインタビュー記事が明日の日経新聞に載る予定。既に電子版にはアップされている。↓ 必見。

世界で財政拡大、金組み入れの強み増す 米ファースト・イーグル運用者:日本経済新聞

とまぁ、ひとくさり語ったところで金価格の最新動向について。

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昨晩KITCOグラフの赤線と緑線が示すように、4000ドルを回復した。Xの@jefftoshimaで一足早く説明したことだが、この3日間で3800ドル台まで下げた(青線)後、反騰。短期売買派の利益確定売り一巡後、出遅れ組には恰好の新規参入のタイミングに。長期退蔵派は高みの見物。市場内部構造は脂肪が取れ、筋肉質=堅固になった。まさに金がアセットクラスとして定着しつつある過程と言えよう。

そして、今や旬の話題が日経平均。5万突破後、続騰。
「カネは天下の回りもの」とはよく言ったものだ。
待っているだけではおカネは回ってこない。自ら行動して出し入れすることで、天下で回すことが必要だ。その結果とも言える現象が日経平均5万超えと金4千ドル超えの同時達成と言える。

米国の量的緩和政策により巨額のドルが市中に出回り、米国の巨額貿易赤字により、そのドルの塊は世界に流れた。その受け皿のひとつが日経平均でもあり、金でもあるということだ。

2025年