2025年6月4日
昨日、本ブログを書いたのが午前中。丁度NY8月もの3400ドル突破の直後であった。上の図の赤線でスポット3400ドルに接近していた時刻だ。
しかし、その後赤線の国際金価格は反落に転じ、緑線に移る。
その理由が興味深い。
日本時間午後12時半に日本の財務省により発表された10年利付国債入札結果が、金の国際価格に下押し圧力をかける結果になったのだ。
ブルームバーグ通信はそのJGB(日本国債)入札について、このように報じている。
10年債入札は最低落札価格が99円3銭と予想(98円95銭)を上回り、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が3.66倍と2024年4月以来の高水準になった。小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)も1銭と前回(18銭)から大きく縮小した。但し、次の焦点は5日の30年利付国債入札だ。前月実施の20年債と40年債の入札は不調に終わっただけに、10年債入札より30年債入札の方が警戒感が強い。消費税減税など参議院選挙を前に財政規律(筆者注、所謂ばら撒き)を巡る不安がくすぶっている。
以上が外電報道の概要だが、問題はこのJGB、すなわち日本国の借金証文とも言える日本国債の危うさが米国債の市場にも影響を与えていることだ。トランプ政権下の大型減税などが引き続き財政規律を緩めると危惧される中で、日米の財政拡張不安が共振しているわけだ。
昨日はNY時間朝イチでアーリーバード(早起き鳥)と呼ばれるトレーダーたちが「JGB入札の結果はどうだった」と相次いで聞いてきたことからも、日本国債への注目度の高さが印象に残った。入札が順調に終わったと聞き、債券市場には安堵感が漂い、金市場では不安時に買われる金が高値圏で売られる結果になったのだ。
日米財政懸念が、今や国際金価格を動かす時代になったことは感慨深い。
特に日本は断トツ世界一の米国債保有国でもあるので、NY債券市場では常に意識される存在なのだ。株や為替より地味で分かりにくい市場ゆえ、一般メディアでは報道されないが、実は最も重要な市場といっても過言ではない。
日本の金市場の参加者は金市場ばかり見ていて、一喜一憂する傾向が強く「井の中の蛙」が多い。霞が関で行われるJGB入札がNY経由で回りまわって、日本国内の金価格に影響を与えるなど、恐らく全く意識していなかったと思われる。
しかし、今やドル金利(債券市場)もNY金価格も、時間外でも活発に売買される時代だ。
本ブログ読者には視野を広く、マクロの視点で金市場を見て欲しい。