2025年11月12日
金積立や金ETFを買う若い世代の多くは老後対策、特にインフレを前提に金を長期保有する傾向がある。尤もな話だ。どう見ても、ばら撒き財政の結果、膨張した財政赤字をまともに返済できる見込みは無いに等しい。
財務省の立場で見れば、インフレになれば国の債務の実質価値は減ってくれる。
日銀に利上げは極力避けることを求めるであろう。勿論、日銀は政治的圧力を拒否することが当然だが、日本は財務省と中央銀行が阿吽の呼吸で金融財政政策を運営しているのが実態と言えよう。
実は、英語ではinflate its way outなどと表現されるほど、米国でも事情は同じだ。インフレは借金する側に朗報をもたらすのだ。
しかし、国民、特に若い世代にとっては、たまったものではない。
将来のインフレの芽を摘み取るためには、増税で財政赤字を減らすことが本筋だが、増税で選挙は絶対に勝てない。
従って、国民は自ら財産を守らねばなるまい。
その手段のひとつが、インフレに強い金を地味に貯める感覚(貯金感覚)で買い増してゆくことだと、本欄で何回も繰り返し述べてきたところだ。
因みに昨日も渋谷のスタジオでYouTubeの収録があり「有事の金のドカ買いは、悪魔の選択」と述べてきたところだ。
若者の老後、即ち30年後に金価格はいくらかとの質問も受けた。正直、全く予期していなかった質問ゆえ〔私はいつも台本無しのぶっつけ本番(笑)〕一瞬、ウームと考えた。先週から諸々、公的機関で喋り続け声も枯れていた(これには参った)。
しかし、筆者はずばり1万ドル!と答えた。
その時、頭に浮かんでいたのは以下のKITCO金10年グラフだ。
まぁ、1万ドル予測でも安過ぎたかなと思っている。
今や金鉱石1トンから抽出できる純金の量たるや1グラムでも御の字の世界だ。円建て金価格で2万円超えが今年の話題だが2万円台で1グラム買えるなら「安い」。それほど、金の生産過程を見るに、生産コストはそれこそインフレの影響で世界的に上昇。
読者諸氏は実際の世界の金鉱山に入る機会はあるまいが、筆者はワールドゴールドカウンシル時代にスポンサーである金鉱山を頻繁に訪問していた。特に印象に残っているのは、南アの金鉱山で地下3000メートルにエレベーター乗り継ぎで40分かけて降りた時だ。ちょっと背伸びすれば頭がぶつかるほどの地下空間。温度40度。湿度100%近く。
ドリリングの音と埃の嵐。「実は先月、ここで落盤事故があったのですよ。」と何げなく言われ、ゾ~ッとしたものだ。もう二度と、あそこに行く気はない!
そして今の金価格は安い!と体感したのだ。1トン3グラムなら優良金鉱石。
それを地上に運ぶだけで、どれほどの作業になるか。
まぁ話が長くなったが、今後の金生産は二次的生産とされるリサイクルへの依存度を高めるのは必至だ。
因みに、今日のXの@jefftoshimaでは日本各地で発見されている新たな金鉱脈の話をしている。