2025年5月16日
添付グラフの赤線(一昨日)は3240ドルから3150ドルまで急落。緑線(昨日)は3120ドルから3240ドルまで急反発。日中の値動きがアジア時間帯も含めて100ドル以上に達するという異常な状況だ。当然、48時間で世界の金現物需給が激変するわけではなく、ひたすら投機筋のなせる業だ。現物の裏付けがない「金」の売買が国際金価格を主導する。危うい地合いである。
まだまだ3000ドル以上は値固めが必要。3000ドルでも実需が増えるようになれば、これはホンモノと言えよう。金ETFも現物の裏付けがあるが、年金基金など長期保有者以外に短期投機筋の恰好の売買ツールと化している。これは金ETF上場に直接関与した筆者にしてみれば想定していない展開だ。よく報道で金ETFの残高が増えたことが金価格上昇の理由と指摘されるが、筆者の感覚では金売りエネルギーのマグマが市場の底流で沸々と沸き立っているイメージが浮かぶ。
勿論、金ETFが金投資家の層を広げた功績は大きいと自負しているが。
さて、昨日の金急騰の理由は米経済指標。特にPPI(生産者物価指数)が前月比で0.5%低下、つまりマイナスになったことはドラマチックなことであった。2009年12月以降の出来事だとされる。
更に、重要な経済指標である小売売上高が事前予測(0.3%↑)を下回った。関税導入前の駆け込み需要が限定的で、米経済の7割を占める個人消費は勢いを欠いていると米債券市場では評価された。
但し、米小売り大手ウォルマートによれば、今月下旬から消費者が値上げを実感し始めるとの見解を示している。現場からのこうした発言は説得力がある。
総じて、米経済不況回避のシナリオで急落してきたNY金に、昨日は一定の歯止めがかかったわけだ。
今後の注目は近々予定されているトランプ氏・習近平氏の直接対話があるのか否か。あれば、その成果が相場には大きな影響を与えよう。具体的には中国側の非関税障壁(米企業いじめ、など)の撤廃などが議論されそう。会談がキャンセルされれば、金には上昇要因となろう。更なる歩み寄りが確認されれば、金価格には下落圧力がかかる。
まぁ、いずれにせよ、本欄の読者にはあたふたせず、じっくり金を買い増してゆくことを勧める。様々な情報が氾濫する中で、個人投資家にとっては「あたふたしない」ことが難しいけどね。