2025年2月28日
金価格は調整色を深めている。これまで下がっても2900ドル割れは買われていたが、昨晩は2800ドル台でも利益確定売りが出るようになった。ロコ・ロンドンで2870ドル台。NY金先物(4月もの)で2880ドル台。金価格上昇のモメンタムが鈍ってきた。2800ドル台でも歴史的高値圏だが、2900ドルを見てしまうと「下がった」という感じになる。引き続き「健全な調整局面」と言える。
もし、2900ドルを超えて、いきなり3000ドルを付けるような展開になったとすれば、その方が余程怖い。山高ければ、谷深しとなるからだ。
トランプ氏の対中10%追加関税という材料も「インフレ再燃で利下げどころか利上げにさえなりかねない」という見方と「米国内物価上昇でGDPの7割を占める個人消費が痛み、不況色が強まる」という見方のふたつに分かれ結論は出ない。トランプ氏もやってみなければ分からない。しかもトランプ政権の経済官僚は皆、忠誠心の高い連中ばかりで「殿、ご乱心」とは絶対言えない。
かくして、金の買い材料と売り材料が併存しているわけで、それならば、いただけるものは、いただいておくという投機筋の利益確定売りのモチベーションは上がることになる。
因みに米株式市場は不況を懸念。10年債と3か月財務省証券の利回りが逆転する「逆イールド」が発生。本来の逆イールドは10年債と2年債のスプレッドの長短逆転現象を指すが、その予告編みたいに映るのでNY市場内で注目されている。逆イールドは不況の前兆とされるので不気味なのだ。でも不況に強い金が下がった。投機的買いがETFも含め異常な規模に膨らんでいるからだ。まぁ、2500ドルで買って2800ドルで売れるなら、不確定なトランプ相場では御の字の売却益だよね。私だってスイス銀行のディーラー時代なら、さっさと利食っただろうね(笑)。
以上は「虫の目」で見たNY金市場の実態。「魚の目」で見れば、米年金や長期運用のファンドはじっくり金を持ち続ける姿勢を変えていない。