豊島逸夫の手帖

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ジャクソンホールでのパウエル講演後、金急騰だが。。。

2025年8月25日

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世界中のマーケットが注目したジャクソンホール中央銀行会議で、パウエルFRB議長が金融政策の軸足をインフレ退治から失業・労働問題に移すことを明言。これはインフレ収束のための高金利政策から、やや停滞の兆候を示している労働市場を支えるための低金利政策に金融政策を変更すると解釈される。具体的には米利下げを9月FOMCだけではなく、年内2~3回実行することだと市場では受け止められた。利下げは金利を生まない金には朗報ゆえ、KITCOグラフの青線の如く、講演中に金は大きく反応した。株も急騰。外為市場では146円台と円高気味に振れた。

さて、この事象をどう見るか。
私見ではマーケットは既に9月利下げを織り込んでいたので、金価格の急騰は続かないと思う。

真の問題はトランプ大統領のFRBへのあからさまな利下げ圧力だ。このまま利下げが決定されればトランプ氏に押し切られたと見られても仕方あるまい。

時あたかもトランプ氏はクックFRB理事をクビにすると息巻いている。同氏の個人的住宅ローンに虚偽ありとの批判だ。クック氏が辞任した場合、後の空席にトランプ氏の息のかかった人物を据える魂胆が透ける。徐々にホワイトハウスによるFRB乗っ取りが進行しているのだ。

仮にトランプ色の濃い新FRBが力づくで利下げを連発したらどうなる。やっと落ち着き始めたインフレが再燃するのは必至だ。
選挙民にとっては解雇増も困るが、物価上昇も困る。
それでも来年、中間選挙を控えたトランプ氏はインフレリスクを軽視して、利下げを進めるのか。

2026年にかけて大きな問題が浮上しよう。

金市場の視点では不況解雇もインフレもどちらも買い材料。
両方同時に進行するスタグフレーションともなれば、本欄で何回も繰り返してきたように金の独り勝ち。
但し、日本経済も米国のスタグフレーションの影響をまともに受けるから、日本人として金が上がって素直に喜べる状況にはなるまい。

最悪の状況に対して、金がリスクヘッジとして働くという程度に理解しておくべきだ。金がスタグフレーションを鎮静化することはできない。

なお、パウエル講演も利下げ決定というほどの強い論調ではない。9月FOMCまで、まだ雇用統計とCPIが1回ずつ残っている。その結果次第ではジャクソンホール発言を取り消すが如き言い回しが使われる可能性もある。
「利下げ方向に向くが、あくまでデータ次第」なのだ。

さて、今日の写真は秋めいてコスモスの花に囲まれるオッサン(笑)。

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2025年