豊島逸夫の手帖

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貸金庫窃盗に使われた金塊

2025年25

話題のあのニュースの一報を聞いた時、「あ、金塊に手をつけたな」とピンときた。筆者はあの銀行出身者ゆえ未だに貸金庫の実態が変わっていないことにも驚いた。

更に続報で、容疑者は「レバレッジ数千倍!まで利用できる海外のFX取引業者に口座を開いていた。億単位の現金が瞬く間に消えていった。いつかは取り返せる。」と信じ込んでいたようだという。

考えさせられるのは投資関連情報の氾濫が多くの個人投資家の心を怪しく揺らせていることだ。今のようにトランプ相場で荒れている時もあれば、特に材料もなく市場が静かな「凪」の状況であるが、紙面を埋めねばならず、放送時間には何かを語らねばならず、無理やり書いた、或いは語った情報が如何に多いことか。
筆者は独立系で自由な立場なので大きな材料が出れば「速報版」を朝イチで書くが、特に書くことがなければ2週間くらい更新間隔が空くことも珍しくない。
このようなメリハリが大事だと思う。貸金庫窃盗はそのメリハリがなく、常に売買したがる投機家の事例と言える。
とにかく金についても静かな心で地味に買い増してゆけば良いのだよ。余計な情報に惑わされるなかれ。

なお、昨晩はJOLTS雇用統計で求人件数が800万人を割り込んだことで、やはり経済、特に雇用救済的な利下げは必要かと解釈され、ドル安(円高)に転じ、金には追い風となった。ロコ・ロンドンで2860ドル接近。NY先物で2890ドル接近。この程度の値差ならそれほど騒ぐスプレッドでもなかろう。何でもかんでもトランプ関税に結び付けたがる報道態勢に疑問符。記事になる頃にはNY投機筋は手仕舞いのタイミングを狙っている。重要なことはロンドンでもNYでも、そして東京でも金価格は上昇中ということだよ。