2025年10月17日
筆者のXアカウント@jefftoshimaに先週から書き込んできた信用不安リスクが、米地銀信用不安という形で昨晩表面化した。簡単に纏めれば、サブプライム(低所得者)向け自動車ローンに特化した企業が破綻。更に自動車部品メーカーの隠れ債務が発覚して破綻。サブプライムとか隠れ債務などの言葉はリーマンショック時にマーケットを震撼させたので「すわ、金融不安の兆しか」と色めき立っていた。その矢先の昨晩、NY市場の午後、米地銀2行が顧客の不正行為により損失が生じたことが報じられたのだ。
NY市場では株が売られ、外為市場では円が買われ、金価格は一日で100ドルを軽く超える「暴騰」を演じた。
冷静に見れば、ローン焦げ付きの金額は小さく、金融市場を揺るがすリーマンショックの再来とは言えない。
とは言え、市場の受け止めは「不気味」の一言に尽きる。
とりあえず株は売って、金を買っておくという投資行動が益々顕著になる。
5000ドル、30000円が絵空事とは言えなくなった雰囲気だ。
まぁ円高に振れたことが、円建て金価格の上昇に若干の歯止めとなる程度。
今後はまず、不良債権を発表した2つの地銀が氷山の一角なのか否か。既に自動車関連事例の方で隠れ債務を見抜けず、少額ながら焦げ付き損を発表したJPモルガンのダイモンCEOは「ゴキブリ一匹。まだ、数匹いる。」と懸念を表明していた。その数匹のうちの二匹が早くも現れたという流れになっている。
金市場の方は、既に様々な複合要因で前代未聞の価格水準に達していたわけだが、ここにきて大きなゴキブリっぽい存在の登場で新たな買いがドッと入り、市場から売り手が消えたかの如き様相だ。
しばらくはこのボヤが大火事になるのか、市場は身構えることになろう。トランプ大統領にしても移民に対する規制を強化させたことがヒスパニックのサブプライム層の自動車ローン返済難を誘発して、貸し手の銀行側は「隠れ債務」として粉飾するという展開になろうとは想像もしていなかった事態であろう。対策として、火に油を注ぐ如き愚策に走らねばよいが。
そして、不安感が金価格を更に上昇させよう。
昨晩はプラチナにも飛び火。1700ドル台に乗り、中期的に2000ドルが視野に入ってきた。銀も地味に上昇している。貴金属セクター内での循環物色を想起させる市場環境だ。
なお、中級者向けには本件がプライベートクレジットへの疑念を強めることを指摘しておく。ノンバンク経由のマネー調達ルートで巨額の投資資金がばら撒かれ、その実態は公表されないため、誰も正確にリスクを把握できていない。要経過観察である。