豊島逸夫の手帖

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嵐の前の静けさ

2007年1月26日

"嵐の前の静けさ"とバーナンキさんは評した。

先日、米国財政赤字問題に言及したときだ。議会予算局の"大本営発表"によれば2007会計年度の財政赤字が1720億ドルまで縮小。三年連続減少、前年比30%の縮小幅である。でも正念場は(ダントツの金食い虫)団塊世代の退職が始まるこれから。そこで"嵐の前の静けさ"というわけだ。

中央銀行の総裁の発言としては"不適切"とも言われた。財政問題は彼の管轄外だから。"あんたは黙ってなさい"ということだろう。

三年連続といえば、中国の二桁経済成長。2006年も10.7%を記録した。特に貿易黒字が74%増!日経本紙記事では"資産インフレ"の見出し。膨張する国内過剰流動性に手を焼く人民銀行の、その不胎化政策の一環として国民に金を持たせる構想については以前述べた。人民銀行が金購入となるとオオゴトとなり、マーケットへの影響も計り知れない。そこで、民間金保有を促進させるカタチならそれほど波風は立たないだろう。そんな発想もあるかもしれない。

基本的に、最近の人民銀行の金に対する姿勢は、"解禁"モードである。数年前の"統制"モードとは全く異なる。

さて、その中国国内の経済成長だが、沿海地域と内陸地方の地域格差は今や有名な話。豊かさが徐々に内陸部に浸透中である。ゴールドのマーケットにもそのトレンドが見られる。例えば、"喜平"のようなシンプルなデザインで付加価値の低い大量生産ネックチェーン。上海などでは、とっくの昔に"ダサーイ"ということで見向きもされないのだが、これが内陸部へ行くと、トレンディな商品と化す。若い男性たちが、これみよがしに、じゃらじゃらつけて闊歩している。

ゴールド宝飾品の販売量を見ると、これは北高南低。寒い地域が優る。当社の中国人マネージャーの解説では、"民力"を映すということなのだが。その彼の見方で面白いと思うのは、中国の若い消費者の反応は、米国型なのだそうだ。貴金属の世界から見れば、素材に対する思い入れが希薄だ。メタルの種類、純度などにはこだわらない。パラジウムジュエリーでも抵抗無く受け入れる。

宝飾の世界では、欧州がクオリティーマーケット、米国がマスマーケット、日本はマス クオリティーマーケットである。そこで中国は、マスマーケット主導ということなのだろう。

2007年