豊島逸夫の手帖

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逆風の中のゴルフ

2007年1月17日

原油51ドルへ急落、為替120円台半ばへドル高、国内では追加利上げの動き、NY株は市場最高値更新中。金市場にとってはかなりの逆風だが、NY金価格は625ドルに張り付いたままだ。欧米市場関係者の言葉を借りればresilient(しぶとく打たれ強い)。じっと根気良く700ドルへの助走開始のタイミングを待っているかのようだ。

価格が大きく下げにくい構造だという安心感はある。600ドル近辺には相当の現物買い需要が集中している。中国はこれから旧正月を迎え、かきいれ時となる。

ドル高には短期的に勢い(モメンタム)がある。ドルをショート(空売り)してきた機関投資家の損切りの動きなども見られる。マーケット内では、特に日本の機関投資家が損切り始めると、これで一相場終わったなどと皮肉られるのだが...。筆者がそのような感覚を持つのはメディアがこぞって"ドル高傾向定着"と唱和したときだろう。いずれにせよ、今の短期的状況をもって世界的ドル離れ現象が終焉を迎えたとは、とても言える状況にはないことはたしか。

イラク情勢は材料視されていないが、トレーディングルームに座ってショートポジション張っているときに、フセインファミリーの絞首刑などの映像を見せつけられるとイヤーなものだよ。あの感覚は実際ショートを経験した者でないと分からない。メディアの取材受けて、"いやー、今更イラク情勢でもないですよ。アッハッハッ"と強がってみても、心の中はヒヤヒヤものなのだ。そういう意味で、地政学的要因はジワーッと効いていると思う。

商品市場の中では、マネーが原油から金へシフトしている影響もあろう。

国内では、追加利上げを巡る観測が飛び交っているが、国際金価格に影響はない。欧米では、利上げといったってせいぜい0.25%が0.5%でしょ、という反応である。実質金利は(若干プラスに転じるかもしれないが)限りなくゼロに近い。利上げ進行が米国は9回表、EUは5回表、そして日本が1回裏から2回表になった程度の話である。今後の展開としては実質金利が1%を超えた時点から徐々に材料視されるかと思う。

いきなり売られて始まった2007年の金相場だが、かえってそれで足場が固まったのかもしれない。走り高跳びの助走でも、ゴルフのスイングでも、きっかけは、やや引いてから始めるものだから。

ただし、逆風のときのティーショットは力んではいけないよ。何を隠そう、今年の正月、香港のシーサイドコースで5日6ラウンドの地獄のゴルフ特訓合宿したときに思い知りました(笑)。

2007年