豊島逸夫の手帖

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第二幕はあるのか?

2007年10月5日

今の欧米金融市場のもっぱらの関心事といえば、短期的には今晩NYで発表の米雇用統計(この悪化がFRB0.5%利下げの引き金となったことは記憶に新しい)。中期的には10月末のFOMCで追加利下げありやなしや。そしてサブプライムに端を発する一連の信用不安が終息したのかということ。グリーンスパン流に言えば、second act (第二幕)ありやなしや。

もし、第二幕があるとすれば、その場面として何かと噂が囁かれるのがロシア、東欧である。ロシアは膨らんだ社債などの債券市場が機能不全で、世界的信用収縮が、デフォルト(債務不履行)というカタチで年末までに顕在化する可能性がある。

そして東欧の金融市場。そもそも東欧諸国が純債務国であることに潜在的不安要因がある。ここで象徴的な事実は、今回の信用不安の渦中でアジア諸国が難を逃れたこと。アジア経済危機当時とは対照的に債権国に転じているからだ。

東欧金融市場の投資行動も危うさがある。キャリートレードが盛んなのだ。ブルガリアの個人投資家が円で資金を借りてマイホーム建てる話を本欄で書いたことがあるが、実は、一番人気のあるのが欧州の低金利通貨スイスフランのキャリートレード。ゆえに、外為市場で"避難通貨"としてスイスフランに買いが集中したりすると、それが東欧のマーケットには災いとなる(円高が円キャリ巻き戻しを加速させる現象と同じ理屈だ)。

そしてバルト海諸国。スエーデンの中央銀行(Riksbank)は、バルト海諸国のマーケットが脆弱であり、そこで信用不安が顕在化すると北欧の民間銀行に波及するとして、二つの銀行名を名指しで指摘する(Swedebank、 SEB)という異例の警告を発している。

このRiksbankは、9月28日に"ワシントン協定第4年度に10トンの金を売却する"と発表した。公的金保有量が150トンで、第二次同協定に60トンの売却枠を持ち、第1年度15トン、2年、3年度と10トンずつ継続的売却をしている国で、はっきりいって、マーケットから見ればとるに足らない量である。ただ、勘ぐれば、緊急資金供給に備えた保有流動性増強という見方も出来る。

そして、もうひとつ気になるのは、ECBが数十兆円の緊急流動性注入を実施し、同時に欧州民間銀行に徹底したサブプライム関連債務残高報告を課したとき、最もマークされたのが(東欧と密接な)ドイツの銀行群であったこと。昨日はドイツ銀行が、"告白の週"に、第三四半期にサブプライム関連で3600億円相当の損失計上というフランクフルト発報道が流れていたことが、なんとも示唆的ではあった。

さて、足元の金価格はNYで10ドル近い急騰(737ドル)。東京発の売りを時間差攻撃でNYが切り返してきたね。目先は、今晩の雇用統計次第。改善すれば追加利下げは遠のき(金には売り材料)、悪化が続けば、ますます利下げ観測が勢いづく(金には追い風)。わずか0.25%の話とはいえ、最近のマーケットへの影響は大きい。

2007年