2007年12月11日
FOMC前夜のNY金価格は13ドル急騰して809ドルへ。50bpの利下げを既に前提に動いている。対して原油は87ドルへ下落。利下げを誘引した米景気減速の方に目が行き、商品としての需要減を懸念している。同じ"利下げ"という要因も、金には追い風。ところが原油にはそうとも言い切れない面があるのだ。この違いは、原油が完全な"商品=コモディティー"なのに対し、金は商品とマネーの二面性を持つことによる。
商品市場から見れば、利下げの理由が、サブプライム問題の実体経済への波及=米景気減速、あるいは後退ゆえに、商品への需要減が懸念される。一方、金市場から見れば、金融商品としての金の最大のデメリットが金利を産まないということゆえ、追加利下げは価格上昇を阻む重しが取れたという感覚になる。
今、米国経済と新興国経済のディカプリング現象が話題になっている。中国経済の成長は米景気後退に、それほど影響されないという議論。その新語を借りるなら、金と原油もFOMCを挟んでディカプリング現象となるかもしれない。
そもそもの相場の上げ幅にしても、原油と金には相当の開きがある。
原油に関して、筆者が鮮烈に記憶しているのは8年前に、あの真面目で権威あるロンドンエコノミスト誌が原油5ドル時代という特集を組んだことだ。その当時、金価格は280ドルであった。こう比較すると金800ドルなど可愛いいものである。
ちなみに、今週発売の日本の週刊エコノミスト誌の08年相場全予測を見ても、金は筆者の原稿だが"世界マネーが流れ込み高値更新も"。対して、原油は"価格が落ち着き60-80ドル台に"。相当な温度差がある。一般的には金も原油も"商品"という分野で 一緒くたに扱われるが、金の二面性には意外に言及されていない。まだまだ、商品市場への理解が足りないのだろう。
さて、日本時間明日早朝のFOMC。焦点は早くも来年1月30日のFOMCで利下げ継続か否かに移ってきた。来年6月までに政策金利が3%-3.5%という説も台頭している。
背景は やはり米景気減速、後退。その元凶のサブプライム退治=利下げが短期的政策優先順位ナンバーワン。長期に潜むインフレ懸念は糖尿病のごとく当座の痛みを伴わないゆえ、痛み緩和が勝負の大統領選挙も勘案すれば、インフレ予防=利上げの優先順位はナンバーツーである。インフレヘッジとして買われる金が高値圏で下がらないのも、インフレ対策が手薄との認識であろう。