豊島逸夫の手帖

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砂漠の洪水

2007年11月27日

カラカラの砂漠に"オイルマネー"という過剰流動性が溢れ、水と緑の豊かな欧米諸国は"信用収縮"という流動性枯渇に泣く。これも国際経済不均衡の変形か。水は低きにつくという物理学の法則は当てはまらず。スエズ運河のような人工的仕掛けを作らねば、二地域間の流動性の水位は平準化しない。そのシステムとはSWF(国富ファンド)であろうか。

一方、アジアでは、中国と日本に過剰流動性が溢れている。しかし、上海株式がバブル化するほどの活況に対し、東京市場は国内投資家の参入が遅々として進まず、外国人投資家の存在のみが目立つ。かたや、株買いたくてウズウズしている中国人。対して、株に二の足を踏む日本人。この差は、証券税制程度で変わるものだろうか。国民性というDNAの違いとしか思えないのだが。結局、日本人はリスクテークに向いていないのかも。色々お勉強するが、結局実践となると大脳では理解しても末梢神経が動かない。挙句に、失敗すれば、"騙された!お上が悪い!"の大合唱になる。

東京市場の地盤低下が叫ばれているが、24時間取引とか規制緩和でDNAが変わるとも思えない。一番の問題は投資家の"心の中"にあるのではないだろうか。

国際経済理論のABCは、比較優位の原則。二国間の貿易モデルでは、お互いに比較優位を持つ財サービス(つまり得意分野)に特化し輸出しあうことにより二国全体の経済水準が上がる。この法則を二国間の過剰流動性の不均衡に応用すれば、昨日報道された如く、中国マネーを東京株式市場に受け入れ、思う存分そのおカネに働いてもらう。日本人は、妹のとった婿養子に経営を任せた兄の若旦那みたいに趣味の生活を楽しめばよい(笑)。

金の世界でも純金積立という地味な商品に45万人もの会員が集まるというのは日本だけの現象。コツコツ貯めるというDNAに合っているのだろう。一方、先物市場が推定10万人とか言われる一部の先物ファンの世界から10年来脱皮できないのも、株同様にDNAゆえではないか。

さて、足元の金価格は昨日もロンドン時間では837ドルまで更に買い上げられたものの、今朝の日本時間に戻ってみれば823ドルで、前日と同水準。先週の安値774ドルからの急騰も、さすがにNYで頭を打たれた。

サウジ原油増産報道による原油反落。10年もの米国債の利回り4%割れ(3.8%)が住宅不況の兆しではとの見方も。外為市場では、円が独歩高に近い上げっぷり。

感謝祭にショッピングしそこなった人たちが、7200万人も職場に戻ってインターネットショッピングに走る"サイバーマンデー"も、前年比20%増の7億ドルという史上最高売り上げと業界は盛り上げるが、実態はその72%がディスカウントや無料配送に誘われたカタチだ。先週金曜のブラックフライデーも、前日から目玉の超お買い得品に並ぶ光景のみが報道されたが、あとが続かない。結局、フライデーもマンデーも価格競争に陥り、客単価が落ちるだけの結果に。

サブプライムが日々深刻化するなかで、実体経済への波及が目に見え始めると、FRBに対する利下げ圧力はますます強まりそう。シカゴの債券先物はそこまで織り込んでいる。

2007年