豊島逸夫の手帖

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上方修正相次ぐ金価格予測

2007年9月25日

大手投資銀行は相次ぎ長期金価格予測を引き上げ。

シティーグループ(アナリスト、ジョン ヒル氏)は2008-2009年の平均価格750ドル。さらにnew cycle(新サイクル)に突入したので、史上最高値850ドル、そして1000ドルの大台をつけても"驚かない"と表現。

ゴールドマンサックスは今後3ヶ月の金価格予測を700ドルから775ドル、今後6ヶ月は715ドルから800ドルへ引き上げ。ただし、対ユーロのドル安は今後12ヶ月で一巡することから12ヶ月予測は725ドルから750ドルへと上昇幅を抑えている。そのケースでも、新興国市場の実需及び公的部門の金購入がドル高要因を相殺しよう、と述べる。

先週、金曜日のNY CNBCではスタンダード&プアーズのアナリストが短期調整必至だが長期強気説を語り、今朝はチャーティスト(罫線専門家)が900ドルを唱えていた。

足元では、昨晩のNY市場は、すぐ近所をイラン大統領が徘徊する一日で、彼のコロンビア大学にての講演(同大学へ非難集中)のコメントが実況中継され、フロアーでは地政学的要因が再び語られていた。特にNYSEのオープニングベルをライス国務長官が鳴らすという異例のセレモニーがあり、直後にフロアーからテレビインタビューに応じ、同大統領がグラウンドゼロ(ワールドトレードセンター跡)を訪問したいなどとはtravesty(茶番)だと厳しい発言。ホルムズ海峡が封鎖されれば原油100ドル必至などというコメンテーターの発言も流れる雰囲気であった。ちなみに、グリーンスパンさまも、世の中は今や長期インフレサイクルに入ったとして原油100ドル説をフィナンシャルタイムズのインタビューで述べていたよ。

原油100ドル、金1000ドルというような数字は絵空事であったのが、大手投資銀行とか金融の神様が口にし始めると現実的な数字になるものだね。

サブプライム問題拡大を表現するpaper crisis(紙の資産の危機)という新語が今年のマーケットの流行語大賞となりそうな気がする。

筆者の見解は変わらず。

足元のNY市場先物買い残高が400トンの大台を突破したことからも、投機筋のoverbought(買い超過)は否めず、調整必至。今年は600ドルを固め、来年は700ドルを固める年と見る。マーケットが21世紀の新需給均衡水準を模索中とは、これまでのセミナーで繰り返し述べてきたことだが、その過程でマーケットはオーバーシュートしがちなもの。それゆえ瞬間タッチで史上最高値更新も充分ありうる。ただし、一般個人投資家はそういうときに調子に乗って買ってはいけない。

市場のほぼ全員が同じ方向を向いたときには、目先、気をつけるべし。プロ相場歴30年の筆者の持つ経験則である。

2007年