豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 早まったか バーナンキ
Page349

早まったか バーナンキ

2007年10月9日

酷い。お粗末。先週末発表の米雇用統計の話だ。もともと振れの大きい経済指標であることは百も承知だ。それにしても8月が当初発表マイナス4000人からプラス89,000人への修正は極端すぎる。その変更理由も計量ミス。テキサスとフロリダ両州の学校新学期が都合で遅れたことという。そこで、教育関連新規雇用が1ヶ月ずれこみ、同分野での2州のシェアが12%あるので、まとまった数字の修正になったという説明...。納得できる??

そもそも、あのマイナス4000人という数字が衝撃となって、ついにはFRB0.5%利下げの引き金となったのだ。ちなみに、7月分も68,000人から93,000人へ修正。バーナンキにしてみれば、"それはないぜ"と言いたい気持ちであろう。普段からマクロ経済指標を見ながら柔軟に金融政策を運営してゆくと明言しているのだから。

マーケットは景気後退の可能性が後退ということで好感。早くもゴールディロックス経済の再現と騒いでいる。悲観論から一気にユーフォリアに舞い上がった感じだ。冷静に見ている人達は、アテにならない経済指標の変動で、これほどマーケットのセンチメントが極端に振れること自体が危ういという。筆者も全く同感。NY CNBCのキュートなキャスターのお姉さんが頬膨らまして"どうなっているの、これ!ナットクできない!"と詰め寄っていたシーンが印象的だった。

雇用統計はトレンドで見るべきだろう。1-5月平均で115,000人、6-8月平均で90,000人。失業率も同4.4%から4.7%へ。傾向値で見れば、明らかに雇用情勢の伸びは減速している。ゴールディロックス(適温経済)というより、so-so 経済(まぁまぁ、そう芳しいとは言えないというニュアンス)というほうが当たっている。

さて、金価格は金曜にいったん740ドル台へ反騰したが、昨晩のNYでは733ドルまで下落。ドル高、原油安、そして利下げ観測後退など目先売る材料には困らない。まだまだ売り足りないね。

2007年