豊島逸夫の手帖

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まだ理性が残っていた金市場

2007年11月2日

先物は800ドルをつけ、現物スポットは800ドルに急接近したところで、さすがに利益確定売りが出た。昨晩のNYでは一時784ドルまで急落局面もあったが、最終的には790ドルを回復している。あのまま800ドルをするりと抜けなかったことで、まだ多少の理性が残っていたのか...

金融市場全体のムードとしては、一昨日の追加利下げにはしゃぎすぎて、昨日は二日酔いとなり、宴の後の反省感が生じた感じ。というのは、マーケットは、住宅問題が悪化しても、またバーナンキ医師がステロイドを25ミリか50ミリ投入して救って(bailout)してくれるさ、と期待する癖がついてしまった。ステロイド中毒の症状である。

ところが、二日酔いの頭で冷静にFRBの声明の行間を読めば、"いつまでも あると思うな、再利下げ"というニュアンスも浮かび上がる。そこに、シティーの投資判断引き下げの報が入り、一気にNY株が売り込まれた。深読みすれば、ステロイド中毒患者(マーケット)がもう25ミリ注入してくれ(0.25%の再々追加利下げ)と、医師(FRB)に催促している相場とも見える。

さて、昨日ワシントンでは興味深いパネル討論が開催された。名づけて"Oil Shock Wave Simulation"。座長はルービン元財務長官。パネラーは政権参謀スタッフ経験者たち。2009年5月。アゼルバイジャンで暴動がおき、原油供給に重大な支障が起きる。イランは米国経済制裁に対する報復措置として同国原油供給停止を発表。原油暴騰でヘッジファンドが破綻に追い込まれ、金融危機に発展するというシミュレーション ゲームである。パネルの議題は"そのときワシントンはどうする"というもの。結論は"解決のための政策手段の選択肢は非常に限られる"。原油価格がどこまで暴騰するかも分からない。

ちなみにアゼルバイジャンのカスピ海沿岸都市バクから、パイプラインがトルコ地中海岸のチェイヤンに向かって建設中。そのチェイヤンからイラク間には重要なパイプラインである。さらにチェイヤン近くからは、連日、クルド人運転手の大型タンクローリー数十台が米軍燃料をイラク北部に運ぶ。まさに、そのトルコ、イラク(クルド人自治区)の国境で、クルド人紛争が激化し、原油90ドル突破のきっかけになったのだ。

なお、NYの原油先物市場には12月限のコールオプション(ストライクプライス100ドル)のオープン インタレストが膨らんでいる。このオプションを売ってしまったディーラーたちのヘッジ買いが、最終的には100ドル越えのきっかけになりそうな様相だ。

さて、いよいよ11月。かねてから述べてきたように今月はヘッジファンドの決算期。昨晩の株安、金安は彼らの一斉手仕舞い売りの兆候なのか。金価格グラフの形が2006年5月に酷似してきたことが、逆V字型の展開の再現を予感させる。5月、11月ともヘッジファンドの決算期という共通項もあるのだ。

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2007年