豊島逸夫の手帖

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スーパーボール マーケット

2007年2月5日

What a week! なんという一週間だったのだ。先週の株、外為、債券、商品、全ての市場がFOMC、GDP、雇用統計等々、連日の経済指標に一喜一憂、振り回された。挙句の果ては、振り出しに戻った感じ。だから言ったでしょ。

(以下本欄1月31日から引用)
さて、今週は、これからFOMC、米雇用統計など目白押しだが、筆者はその度に一喜一憂して振り回されることのないように自戒している。週末まで相場から完全に離れてスキー場で過ごし、ほとぼりが冷めた来週に現場に戻るくらいのほうが大局観を保てると思うのだ。
(引用終わり)

自嘲気味のNY株式トレーダーが、目下の全米の話題スーパーボールに喩えてこう言った。NY株式市場は、連日、インフレ ベアーズとゴールディロックスブルズの対決だ。第一クオーターではFOMCに反応してインフレベアーズが3ポイント先取(これは株式の例なので、インフレ懸念で弱気)。
第四クオーターになって雇用指標でゴールディロックス ブルズが5ポイント奪回(インフレ無き経済成長中ということで株には強気)。

金市場ではブルベアが逆転し、第一クオーター、インフレ ブルズ(強気)のポイント。第四クオーターはゴールディロックス ベアーズ(弱気)のポイント。ということになろうか。金曜日に利益確定売りが入り、週を終わってみれば、結局640ドル台。でも、レンジの下値は徐々に切り上がっている。

さて、市場の話題の一つがIMF金売却案。正直、またかよ、という感じだ。何年かにいっぺん、亡霊のように出てくる話題だから。それでいて、まず、合意には至らない。

今回の事情は、IMFが2010年まで4億ドルの資金不足。そこで、諮問委員会のご託宣が、IMF保有3217トンの金のなかから400トン(66億ドル相当)を売却し、その資金を運用することにより、1.95億ドルの収入を捻出できるというもの。その間、金市場への影響を避けるため、各中銀は金売却を減らせとも付け加えている。同委員会にはグリーンスパンやトリシェ(ECB総裁)らの名前が並ぶ。

市場であまり材料視されず。かえって金市場の外で騒がれている感じもある。金市場がクールなのは、本件の承認にはIMF参加国の85%の賛成が必要なこと。多くの比例投票権を持つ米国では、同議会の可決が必要なこと。前回は、米国内産金業界の圧力、そして、IMF加盟発展途上国のなかの産金国の反対で実現しなかった。"IMFは最貧国救済の為の資金捻出というが、金産業はその最貧国にとって経済基盤の一つなのだ。余計なことをしてくれるな。"という主張が通ったカタチだった。ただし、相場が売りの時は、便利な弱材料としてしばしば口先介入に使われるので、今後3ヶ月くらいは亡霊が現れたり消えたりを繰り返すと思われる。

さて、筆者の注目点が二つ。

まずETFが一時550トン台で若干減少していたのが、直近で566トンへ再上昇始めたこと。このあたりがマーケットの潮流を敏感に映していると感じる。

懸念は中国バブル騒動。先週、北京の政府に近い有力筋がFT(フィナンシャルタイムズ)とのインタビューで"皆が皆、株上昇を期待するようになると、これはバブルの兆候だ"と爆弾発言。これが一面トップに載り、同国株式市場が急落。連日、バブルか否かが大きな問題化している。皆が、うすうす、こんな好調子が何時まで続くわけがない、と思い始めていた矢先の"政府に影響力を持つ人物"の発言ゆえ効いた。バブルという現象はムードに左右される面があるので中国国民の(群集心理)反応に注目している。

2007年