豊島逸夫の手帖

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使用前、使用後

2007年9月20日

嵐のような一夜が明けて、興奮さめやらぬマーケットである。ここは、冷静に、今の金価格高騰の要因を検証し、0.5%利下げ前後の影響度の比較をしてみたい。

サブプライム問題 短期的○、長期的◎
金利下落
ドル安
原油高騰、インフレ懸念

中国、インドの需要

金ETF残高増
ヘッジ買戻し
中銀売却 × ×
地政学的要因
リサイクル増

[コメント]

―サブプライムは、仕組み商品(デリバティブ)の危うさ、格付け機関の後手後手の格下げ、SIVなどの手法による巨額の簿外資産の存在、そして荒っぽいセールスなどの諸問題を露わにした。当面、FRB・ECBの共同戦線で株式市場には安堵感が支配しているが、一般投資家の疑念は消えない。英国の銀行の取り付け騒ぎの映像を見ていると、ペイオフ前夜の日本人投資家の心理を思い出した。信用リスクに対する懸念、そして信用リスクのない実物資産への回帰現象はボディーブローのように効いてくる。しかも、FRB・ECBが何かを隠しているのでは、という疑念も払拭できず、仮に大型破綻などが勃発すると金市場に対する影響も加速するだろう。故に短期○、長期◎。

―対して、サプライズ利下げ、それにともなうドル安の加速は700ドルという未知の海域を進む"ゴールド丸"にとって強力な推進力となった。エンジンの数が二つ三つ増えた感じである。

―中国、インド、ETFなどの実需の伸びは果たして700ドル台でも続くか。少なくも、これまでのような驚異的増加量は出てこないだろう。対して、リサイクルは加速しよう。

―ヘッジ買戻しは大手鉱山会社のサプライズM&Aの発表などで、ニュークレストのような影響が出る可能性を残す。

―中銀売却は所詮ワシントン協定による年間500トンの規模を大きく超える可能性は極めて低い。数字が見えている材料にサプライズ性はない。ちなみに、今年149トン売却して一躍売り頭になったスペインが売却完了を発表。

―地政学的要因はイラクもイランも北朝鮮も陳腐化の感あり。ちょっとやそっとの自爆テロくらいでは相場は全く動かない。

―最後に番外編としてプーチンのドル離れ宣言を受けてのロシアの公的金購入の可能性を挙げておく。

―目先は材料出尽くし、NY先物買い残の膨張により調整必至。調整入りが遅れれば遅れるほど後の反落も大きいと認識すべし。

2007年