豊島逸夫の手帖

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ブッシュ政権 サブプライム救済策発表

2007年12月7日

昨晩のNY市場の話題は、なんといってもブッシュ記者会見。以下の対策を打ち出した。
―FHA(連邦住宅局=ローンの債務保証する政府機関)保証つきのローンへの借り換え促進
―変動金利ローンのteaser rate(最初の数年間の特別低金利。その後、高金利へ移行)を5年間凍結

皮肉なのは、ブッシュ、ポールセンの記者会見直後は反応薄だったが、午後になってバーナンキが同案に支持を表面してからNY株が好感し急上昇したこと。大統領の言葉よりFRB議長の一言のほうにマーケットは反応するという例となった。NY株は、住宅関連、金融株など、これまで売られてきたセクターが軒並み急反騰。といってもショートカバー(空売りの買戻し)程度との冷めた見方も根強い。

そもそも、この救済策も賛否両論渦巻いている。12月4日付けにも書いたように、正直者が馬鹿を見る結果となるは明白。無理なローンを組んで豪邸に住み、ローンは滞納という輩が救済されるという不公平感。さらに、故意に滞納すれば救済されるということにもなる。最後は納税者にツケが廻るという不満。通常であれば政府の介入を嫌う共和党が賛成に廻っているのは、やはり大統領選挙を控え、実態経済、とくに消費への悪影響波及を嫌うから。

総じて、マーケットの評価は、bailout(救済)というよりBand-Aid(絆創膏)。
第3四半期には差し押さえ件数が635,159件に達し、前期比30%増、前年同期比100%増。196所帯に1件の割合である。さらに、これから200万件のサブプライムローン(変動金利)がteaser rate期間の終了、高金利への移行期を迎える。まずは凍結というBand-Aidで出血は防ぐが、根本的対策に妙案は無い。まずは絶対的金利水準を下げないと話にならない。その意味では来週のFOMC決定の前奏曲とも読めるのだ。(救済策といってもこの程度やから、やっぱり大幅追加利下げをせにゃアカンというココロ。)

結局は11月22日付け"マーケットが忘れかけていること"に書いた如く、"サブプライム問題の本質は米国経済の赤字体質のツケが廻ってきた"ということに尽きる。もう一度、読み直してほしい。

さて、金価格は急反騰で800ドル台回復。原油も反騰。24時間価格グラフを見ると、NY時間、ブッシュ記者会見後から急騰している。救済策を株はとりあえず好感したが、金市場の評価は冷ややか(信用不安は続く)。大幅追加利下げ必要性の認識を高めただけ、ということか。でも、買われたといっても株同様、ショートカバー ラリーである。

2007年