豊島逸夫の手帖

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820ドル突破

2007年11月7日

大きく利の乗った買い手は売りを急がず、リサイクルも先高感強いなかで売り控え。ディーラーもショート(空売り)など怖くてとてもできない。そこに800ドルのコールオプション売ってきた連中はストップロスの買いに走り、900ドル、1000ドルなどのコールオプションを"まさか現実のものになるとは思わず"引き受けてしまった胴元は、じりじりと買いヘッジの機会を窺っている。ドル価値下落の認識が強まる米国人投資家は海外へ資金逃避を始めた。ドルの代替通貨としての金も彼らにとって有力な逃避先だ。

金融不安も終息の気配が見えない。その信用不安を端的に表している数字がCDS(クレジット デフォルト スワップ)である。これは債権者が債務者の債務不履行、破綻のリスクを回避するために、第三者に債権を転嫁するデリバティブ取引で、その対価として債権者は通常の銀行間レートより割高の金利を支払う。その上乗せ分は債務不履行リスクが高くなれば当然上がる仕組みだ。その金利スプレッドが足元で急上昇中

メリルリンチ   0.18→1.03
シティーグループ   0.27→0.60
UBS   0.10→0.51
クレディースイス   0.04→0.52

具体的に説明すると、メリルに対する債権者が債務不履行リスクを第三者に肩代わりしてもらうためには5年もののCDSだと現在は1.03%のリスクプレミアムを保険料みたいな感覚で支払わねばならぬ。それが、つい数週間前までは0.18%で済んでいた。

ちなみに前回触れた債券保険会社MBIAは、0.28→3.80、AMBACは、0.26→3.15。この数字は危機的状況といえる。

このCDSが典型的な例だが、こういう状況になるとマーケットはヘッジに走る。原油の世界では価格上昇に対するヘッジとしてのコールオプション購入が急増中だ。2008年12月限の$100のコールオプションはオープンインタレストが倍増。2010年12月限のコールオプションは$100、$120、$160、そして$250まで急増中だ。

足元の注目点は 2007年12月限の$100が48,032件にまで膨張していること。来週火曜日が、そのオプション清算日なので、そこが100ドル突破のきかっけとなるかも。

原油も金もこのような異常な相場つきになると、材料などには関係なくオプションのような内部要因で決まってくるケースが増えるのだ。

なお、昨日紹介したスーパーモデル嬢の報道が更に拡がっているが、今や、FRBのコメントより彼女の一言のほうがドルユーロ市場への影響力が強いとか皮肉られている。

相場見通しは毎週のように上方修正されている状況。今週のエコノミスト誌の拙稿に書いた"1000ドル"の話に日々近づいている。

11月11日(京都)と11月18日(東京六本木ヒルズ)でのWGC単独主催セミナーで、詳しく予測したいと思います。すでに、日経マネーのサイトにて先行発表したので続々応募が来ていますが、11月7日の日経夕刊にて一般告知。前回5倍近い応募があった反省から、今回は奮発して300人収容の会場を用意したので多分大丈夫だと思うけど。

昨晩、NHKゆうどきネットワークで、前回の新宿セミナーの模様が詳しく報道され、出席者のインタビューも色々あって興味深かったです。それにしても、お茶の間向けの、ほんわかした番組が金高騰を取り上げる時代になったかと改めて実感しました。

2007年