豊島逸夫の手帖

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金ETF(?)騒動

2007年7月18日

本稿は北京で執筆中。一年ぶりの北京は、濃霧(実はスモッグ)の中、気温33度、湿度75%。もう一ヶ月もお天道様を拝んでいないとこぼす北京っ子たち。昨年までは大陸性のクリアでドライな気候だったのに。この国の環境問題は思った以上に深刻だ。

金市場については、中国人民銀行ならびに上海金取引所が先物上場を目指し、システムを構築。試運転を繰り返し、金先物取引規則を作成。先物監督当局の許可待ちの状況だ。

一方、民間銀行は、スポット金売買のインフラ構築に手間取っている。特に税金の処理が問題のようだ。日本市場のケーススタディーは貴重な前例として関心が高い。今日、金融機関などを対象にしたゴールドセミナーにて講演することになっている。

日本では昨日の日経夕刊で大証の金価格連動投信上場がトップ記事になって話題のようだね。記事のコピーを読んだ限りでは、にわかに金ETFとは言いがたい商品のようだが。(現実の法体系との妥協で現物の裏づけがないゆえに。)

記事中にあるニューヨーク証券取引所(NYSE)とシンガポール取引所(SGX)相互上場の金ETFは、昨日現在487トンの金現物がカストディアン(HSBC)の金庫に保管され、金庫内の写真とかバーナンバーまで開示されている。とくに日本の投資家の金保有理由の第一位が、毎年の調査で、ダントツで(今年は51%)"誰の債務でもない"あるいは"紙くずにならない"という実物資産独自の価値にあるため、現物の裏づけがないと投資家のニーズに答えた商品とは言いがたい。所詮ペーパーゴールドということになってしまう。

大証は現法規体系内で最も抵抗のないfast track=早道を選択して金リンク債を組み込む投信を上場するようだが、真打登場はこれからか。

2007年