豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. リスクマネー撤退ってなに?
Page273

リスクマネー撤退ってなに?

2007年3月2日

年初からドル高のなかで金高、今週は一転してドル安のなかで金安。従来の相場の常識が当てはまらない。

あえていえば、イランという地政学的要因、原油反騰、インフレ懸念再燃をはやして600ドルから690ドルまで買い上げられたところで、いくらなんでも買われすぎかなという反省気分強まった矢先の上海発株安連鎖騒動であった。

ドル要因にしても、セオリーどおりのドル代替通貨としての金という位置づけより、円安=円キャリーマネーの運用対象として金が売買されている側面のほうが短期的には強く出ている。ドル高=円安=円借りて金買い、ドル安=円高=円キャリー巻き戻し=金買いポジションも巻き戻し、という構図である。そして、必ず説明に使われる言葉が、投資家のリスク許容度低下、リスクマネー撤退、流動性縮小。

よく考えてみると、使う人により意味の異なる、あいまいな言葉である。例えば、日本で"貯蓄から投資へ"という錦の御旗の元に語られるリスクマネーとは、個人投資家がいつまでもゼロ金利に近い銀行預金ばかりではなく、多少はリスク性のある投資媒体にも分散すべしとの議論である。通常、銀行預金や国債以外の資産がリスク資産とされる。(預金も国債も実はリスクがあるのだけれどね)。普通の個人を想定した議論だから、デイトレーダーのような短期的売買のリスクマネーとは違う。

それが、今回のような世界同時株安の説明となると、短期的売買のファンドに代表されるリスクマネーが明らかに想定されている。そのリスク許容度低下とは、ひらたく言えば、ヤバイからしばらくは模様眺めに徹しようという姿勢のことだ。とりあえず抱えているポジションは売り手仕舞いして身辺整理するから、相場の下げが加速する。しかし、ファンドというのは運用してナンボの世界だ。その運用益を出資者に還元することがシゴトなのだから、いつまでも"撤退"を続けるわけにはいかない。ほとぼりが冷めれば、必ず避難先の穴(=米国債などの債券市場)から這い出してくる。

その間、長期保有の年金とか一般個人投資家には目立った動きは出ない。年金などは押し目探しかもしれないし、多少株を保有する個人は心中穏やかではないが、ただ見守るだけという状況かもしれない。これも、リスクマネーの一つの形態である。

金市場では、ファンド型のリスクマネーが3-6ヶ月サイクルで出入りを繰り返し、長期保有型のリスクマネーは一貫して押し目を拾ってきた。その結果、短期的乱高下を繰り返しながら、価格水準が300ドルから600ドルまで徐々にせり上がってきた。今回とて例外ではない。

さて、目下の相場は660ドル台まで下がってきた。かねてから650ドル以上は固まっていないと述べてきたが、ここからはアジア中東そして金ETFの現物需要も値ごろ感で入ってくる水準だ。あらためて足元を固める時期である。

2007年