豊島逸夫の手帖

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金史上最高値更新報道

2007年11月12日

金の史上最高値は、現物で1980年1月21日ロンドン後場850ドル。NY先物で同日875ドル(ちなみにこれは始値であり、同日の終値は825ドル。さらに翌1月22日のロンドン前場は、なんと763ドル!!!)。

当時は800ドル越えといっても1月18日と21日の48時間だけであったのだ。対して、今回は800ドルを突破して、すでに1週間。その間2回ほど840台を突破して850ドル目前まで行ったが、2度とも跳ね返された。マーケットの感覚としては、史上最高値突破ならず、という受け止め方であった。が、メディアは、先週金曜日に一斉に"NY金 837.50ドル 史上最高値更新"と書きたてた。朝日、読売、毎日、日経、すべて同様の報道のそろい踏みである。

そこで、記事をよく見れば、NY"終値"ベースで史上最高値、と書いている。
なーんだ、そういうことか。でも、マーケットの現場の感覚としては、837ドルで史上最高と言われても、イマイチ、ピンとこない。まぁ、市場の過熱感がマスコミの取材合戦にも波及したということか。

そういえば、今週号の日経ビジネスにもエコノミスト誌にも"原油100ドル、金1000ドル"という全く同じ見出しが見える。まぁ、たしかにエコノミスト誌の先週号には、筆者が"金価格1000ドルも視野"というタイトルをつけられた原稿を書いたから、その片棒担いだカタチになっているが...。

我々、ディーラー仲間の間では、金でも株でもドルでも、一般紙がこぞって急騰などと騒ぎ始めたら一相場終わりさ、と、よく言う。情報が多くの個人にまで浸透すれば、新鮮味はなくなり、マーケットは先読みして利益確定の売りに走りがちなものだ。

"噂で買って、ニュースで売れ"という相場格言が、その考えを象徴している。足元の金価格は、連日820ドル-840ドルのレンジで日中20ドル前後の乱高下が続いている。商い(流動性)は薄い。インターバンクの売買スプレッドも、時に2ドル以上に拡大するし(普段の4-5倍)、1ロットあたりの売買単位も普段の半分(10000オンスから5000オンスへ)に抑えられている。要はディーラーも目先読みきれないから、売買したくない、という意思表示なのだ。

全体の流れも上昇モメンタム(勢い)が、やや削がれているかな、という感じだ。原油も100ドル目前で足踏み状態。金も原油も期待されている大台をいずれ突破することは必定と思うが、周りが騒ぎ始めると、まずは引いてしまうのがプロの習性なのだ。

さて、昨日は京都にてWGC単独主催セミナー"800ドル、これからどうなる"を開催。定員100名の会場に130名押し込めてしまい、会場が超満杯になってしまいました(大分、徳島、愛媛、広島、静岡等々遠方よりの参加もあり)。その熱気に圧され、後半の本音トークでは、池崎キャスターの老獪(失礼!)巧みな話術に、ついつい、とても活字には出来ないようなことまで口走ってしまい、帰りの新幹線では少々反省しておりました。でも、出席者の皆さん、私は本気であのように考えております。

今週末のWGC六本木ヒルズセミナーでは、言動に気をつけます(笑)。

2007年