豊島逸夫の手帖

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2007年の地政学的要因は

2007年1月16日

ブッシュ新イラク政策が先週発表されたことで、今年の"イラク リスク"のポイントが明らかになった。つまるところ、シリア、イランへ戦線が拡大するか否かである。しなければ、マーケットの材料としては陳腐化したままであろう。

しかし、新政策を巡る米議会でのやり取りを聞いていると、事態がかなり切迫していることも明白である。イランの間接的介入に関してのやり取りをまとめてみると、
― イラク内でのイラン、シリアとの補給路を絶つ。
― イラク国内の米軍への攻撃には断固反撃する。
(その後、イラク内のイラン政府外交関連施設と見られる建物襲撃、イラン革命派5名逮捕などのニュースが相次ぐ)
― 追跡してのイランへの越境はない。
(これに対して、民主党議員の発言は、1970年のベトナム戦争時、米国政府はカンボジア侵入を当初は明確に否定したではないかというもの)
― ホルムズ海峡に第二次空母部隊を派遣する。アラブ諸国へは、パトリオットミサイルを供給する。

このやり取りの過程では、ブッシュの身代わりにライス国務長官が集中砲火を浴びたカタチ。民主党女性議員に、"あなたは子供がいないから、息子をイラクに遣った親の気持ちが分からないのだ"とまで詰め寄られる一幕も。さすがに、これは(ボクシングで言う)ローブローだとたしなめられたが。

さて、このイラク新政策発表後のマーケットの反応は、株高、原油安なので、共和党は"マーケットの信任投票"と解釈しているようだ。しかし、米国民、さらに世界の反応は厳しい。

具体的に金市場へ影響するケースとしては、米軍がイランへ越境するような事態、或いは、"世界地図から抹消"と名指しされたイスラエルの単独反撃などがサプライズとして考えられる。シリアの反応も不気味だ。

地政学的要因は持続性に欠け、その影響は一過性になりがちなのだが、相場の大台突破などのきっかけ、或いは推進力となる傾向もあるので、やはり目が離せない。

2007年