豊島逸夫の手帖

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夏の乱気流

2007年7月27日

NY金価格は2日で22ドルの下げ。118円台の円高も同時進行。ただし、ドルの対ユーロ相場には大きな変化なし。従ってドル安というより円高という様相だ。そうなると円建て金価格はダブルのきつい下げとなる。夏季休暇モードのマーケットで、値だけ乱高下する典型的パターンになってきた。"相場休暇"を奨めてきた本欄としては、やっぱり、という感じ。

引き続きサブプライムに端を発する米国債券市場の信用不安がリスクマネーの撤退を呼ぶという、お馴染みの流れである。金市場に関しては短期投機マネーが一斉に引っ込んでいる。市場の"泡"の部分が去ってゆく。

NY株の下げもきつく、マーケット全体にリスク回避の連鎖現象が生じている。
サブプライムに関しては、信用状況が高いとされるプライムの分野にも波及。返済遅延が増加し、近隣に一件でも差し押さえが生じるとその地域全体の不動産価格が急落するという悪循環。デリバティブが蔓延するマーケットの最大のアキレス腱とも言える"風評被害"である。多く投資家のマインドに"うちは大丈夫かしら"との疑念が生じると、信用不安が一気に拡大する。なお、サブプライム問題は2009年まで続くという見通しなどがしきりに語られている。多分、いったん終息した後、忘れた頃にまたどこかで火がつくという展開になるのだろう。

NY株急落に関しては、7月6日から空売り制限が緩和され、これまで上げ局面に限定されていたのが、下げ局面でも解禁された。これが、短期的にはボラティリティー(価格変動性)上昇に拍車をかけているようだ。ただし、この解禁措置は長期的には、より自由な価格形成に資するとの評価もある。

このような地合いゆえに、目下の勝ち組はVIXなどのボラティリティー指数を買ってヘッジしていたファンドなどに限定される。

外為市場のドル円は、日本人主婦トレーダーの円売り 対 外国勢の円買い。潤沢な手元資金を元手に果敢にポートフォリオの多通貨分散に励む日本勢 対 円以外全ての通貨に対してドルを売ってきた欧米トレーダーの一騎打ちである。これまでは日本勢の連戦連勝。

なお、欧米の金市場がドル高ドル安のベンチマークとしてウオッチするのはドルの対ユーロレートであることをお忘れなく。

2007年