2007年11月1日
予想どおりの0.25%追加利下げ。昨晩のNYはFRB発表前から価格が上昇し、発表後は一時材料出尽くし感で売られたが、すぐに上昇を再開。加速がかかって798ドルまで来ている。
金市場が売りのシナリオとして最も警戒していたことが、追加利下げ見送りであった。とくに直前には米GDP (第三四半期)3.9%成長という堅調な経済統計が発表されていただけに、見送りの可能性が強まったかにも見えた。それゆえ、予想通りの0.25%の利下げが、金市場にいちだんと買い安心感を与える結果となった。FRBは金価格上昇を追認したとも解釈できよう。
これで、ここまで金価格急騰の推進力となっていた、ドル安、金利下落、インフレ懸念が少なくとも次回のFOMC(12月)までは持続するであろう。(事実、商品市場の価格上昇がインフレ懸念を高めていることをFRBは声明の中でも述べている。原油価格も94ドルまで続騰した)。
0.25%の追加利下げが、ただちにサブプライム信用不安を解消させる即効性をもつとも思えず、信用リスクが高まるなかでの質への逃避買いも続こう。はっきり言って、売りの理由を探すことが難しい。ディーラーとしてはショート(空売り)などできる状況ではない。
今後の注目点は、これで利下げ打ち止めとなるか否か。意見は分かれている。債券王ビルグロス氏は来年中には3.5%にまで下がると予測。対して、FRBのインフレ重視スタンスの方を重視し、これで打ち止めと見る向きもある。今回の決定に当たっても、FRB内で一人、打ち止め論を唱え追加利下げに反対した委員がいた。
筆者は、サブプライムの実体経済への悪影響が出るのは、タイムラグを伴って、現在進行中の第四四半期にずれ込むこと、USBなどもサブプライム関連評価損計上が同四半期に続くと述べていることなどを勘案するに、12月も0.25%の段階的追加利下げに踏み切らざるを得ないと見る。
金価格に関しては、今月がヘッジファンド決算期ゆえに益出し売りによる急落局面も予想されるが、上昇トレンドまで変わるような兆候は感じられない。さらに、昨日も述べたように、円金利の絶対的低水準は変わらず、引き続き円は売られやすい地合いゆえ、円安、海外金高のダブル高の可能性も強い。世界的なドル安傾向の中で、円だけは例外なのだ。
なお、本日は午後、日経ホールにて日経プラスワンセミナー。このようなマーケットの重要な時期に重なり、果たして持ち時間内に語りきれるか。それにしても最近の参加者の真摯な眼差しを見るに、うっかりジョークも言えないほどの張り詰めた雰囲気を感じる。