豊島逸夫の手帖

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マーケットの潮流に変化の兆し

2007年11月14日

金、原油市場はoverbought (買われすぎ)、NY株はoversold(売られすぎ)。その結果、金、原油は売り手仕舞いモード。NY株はショートカバーラリー(空売りの買い戻し)。外為市場では、二つの大きなショートポジション(ドル売りと円売り)が、リスク回避の流れの中で、買い手手仕舞いモード。どの市場でも、潮の目が変わってきた。

金については、構造的要因を考えれば長期上昇トレンド持続に異論はないが、この3ヶ月弱で調整らしい調整もなく200ドルの棒上げは、いくらなんでもやりすぎでしょう、という理性ある反省感が戻りつつある。ここは、新たな需給均衡点をもっと冷静に模索しようではないか、という意思表示にもとれる。

地合いは戻り売り。足元では800ドルを挟み、東工取発の新規買いと欧米発の手仕舞い売りが交錯する状況。昨日の極東時間には早朝791ドルまで急落後、東工取の時間帯に808ドルまで買い上げられたが、欧米勢の戻り売りに頭を叩かれた。

昨日も書いたように、センチメントが変わったら、頭の中をリセットする必要あり。上げのモメンタム(勢い)が萎えた。下値模索の段階に入ったと言える。その背景には、ショートカバー主体のドル高(対ユーロ)と、円高に触発された円キャリー巻き戻しという動きがある。

さらに、原油高騰も一服。昨晩は、注目の100ドルコールオプションの期日を迎え、予想されたパニック的オプションカバー買いもなく、100ドル突破へのモメンタム(勢い)が失速した。100ドル突破なしと見るや、トレーダーは一斉に原油劇場内の出口へ殺到。

NY株は、大手銀行のさらなる追加損失"告白"を見込んで、金融株に相当のショート(空売り)が蓄積していた。ところが昨日の首脳発言は、その"期待"を裏切るものばかり。

―JPモルガンCEO "We are fine!"。CDOもサブプライムも大丈夫!
―バンク オブ アメリカCFO "損失はmanageable=十分管理可能"
―ゴールドマンサックスCEO "まとまった評価損計上はなし"
さらに、例の債券保険会社に、あのバフェット氏が資金提供を申し出たとの噂も流れる。

そこで、金融株をショートしていた連中がハシゴ外されたカタチ。やれやれと買い戻しに走った。ゆえにショートカバーラリー。この上げが本物か否かについてはまだまだ異論あり。

さて、金市場については、投機筋が逃げるとなると、筆者は例によって徐々に買いモードに転じる。為替の110円は魅力。円高100円説とか流れるが、ドルと円は所詮、脛に傷(巨額の赤字)持つ二つの経済の弱さ比べ。それに円高といっても、日米絶対的金利差はあまりにも開いており、ドルを借りて売る際の金利コストはディーラーにボディーブローのようにずっしり効く。4%の金利差を上回る為替差益を生み出すのは大変なハンディキャップレースなのだ。これは実際に外為ディーリングを体験したものでないと実感が湧かないと思うが。

従って、為替面からは国内金の買い水準である。問題は海外金。800ドルというのは、いかにも居心地悪し。それでは、どの水準で折り合いつけるかまでは、活字には出来ず。週末の六本木ヒルズセミナーにて純金積立会員でもある池崎キャスターと掛け合い漫才にて語りたいと存じます。(今回も前回に輪をかけて応募多く、急遽定員300名から500名に増やしました)

なお、名古屋の方は、明日、日経プラスワンセミナー名古屋篇があります。

2007年