豊島逸夫の手帖

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6月に入るや急騰

2007年6月4日

ヘッジファンド決算期の5月が終わり、いきなり671ドルまで急騰。想定内の動きとはいえ、650ドル台が底、期末過ぎれば新展開と想定していた当人も、あっけにとられるくらいの変わり身の早さである。

というのは、先週の金曜日には、雇用統計増でドルは高めに推移するなか、ECBが過去2ヶ月で37トンの金売却を発表。にもかかわらずの金急騰なのだ。最近は、中銀売却とか中国バブル懸念とか、いろいろ後講釈を使ってショート(空売り)筋が売り込んでいたので、"変わり身が早い"と感じるわけだ。マーケットのセンチメントが変わったと言ってしまえば身も蓋もないが...。

金ETF残高も決算期ヘッジファンドの益出し売りにより579トンまで減少していたのが、やはり、期が改まるや593トンまで急回復。 Sell in May and go away(気候の良い5月はNYを脱出して人生楽しもうぜ)という格言を地で行くようなファンドの動きであったが、その彼らがJuneの声を聞いて続々NYへ戻ってきたようだ。

今回の買いの主体は、いわゆるショートカバー=空売りの買い戻しであるが、NY先物買い残高も"下値抵抗線"とも云える300トンを割り込んで地合いは軽かったので、新規買いも入りつつある状況と思われる。

まぁ、これで2007年第3ラウンドの開始ゴングが鳴った感じかな。

なお、ECBのプレスリリースは昨年11月にも23トン売却したことを確認したうえで、これで今年9月末までの第二次ワシントン協定第三年度におけるECBによる、さらなる金売却の予定は無いと手短に伝えている。要は、第三年度も(ドイツが売却しないので)年間500トンの金売却枠が未達に終わることが確認されたと言っていい。金ショートの口実を一つ封じてしまったようなステートメントである。

為替は円安に振れ、海外金高+円安のダブルで国内金価格が上がるという、これも今年お馴染みのパターンの再来だ。ドルと金の逆相関という"市況の法則"も当てはまったり当てはまらなかったり。マーケットのセンチメント次第である。

そもそも"ドル安、ドル高"という言葉の定義が曖昧なのかもしれない。金利差を追えば目先のマネーは当然、低金利通貨の円を離れ、相対的高金利通貨のドル、ユーロにシフトする。とはいえ、米経済の赤字体質を見るに(ポートフォリオの5割以上も)ドルという通貨に偏って長期保有することには躊躇い(ためらい)を感じるので、長期的ドル離れ傾向も顕著である。とりあえずドル、ユーロで金利は稼ぐが、同時に金という"ドルの代替通貨"などにも長期的にETFなどを通じて徐々にシフトさせてゆく、というポートフォリオのリバランスあるいは多通貨分散行動が進行中ということだと思う。

ドルは今後も基軸通貨の座に君臨するであろうが、ドル保有比率を6割から4割程度に引き下げるような動きが今後加速すると感じるのだ。

今日は丸の内で日経プラスワンセミナー。色々語りたいと思います。

2007年