豊島逸夫の手帖

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800ドル割れ

2007年11月13日

24時間で30ドル以上急落。荒っぽい下げに見えるが、待ちに待った健全な調整入りである。やっぱり、昨日(11月12日)書いた経験則(一般メディアがこぞって書きたてると一相場終わり)は生きていたようだ。

11月2日付け本欄"まだ理性が残っていた市場"でも、こう述べた。

さて、いよいよ11月。かねてから述べてきたように今月はヘッジファンド
の決算期。昨晩の株安、金安は彼らの一斉手仕舞い売りの兆候なのか。金価
格グラフの形が2006年5月に酷似してきたことが、逆V字型の展開の再
現を予感させる。5月、11月とも、ヘッジファンドの決算期という共通項
もあるのだ。

今回の急落を見ると、やはり"まだ市場に理性は残っていた"と感じる。ここでじっくり調整を経て、値固めをすれば、長期上昇トレンドの持続性はより堅固なものになる。

急落の要因は"ドル相場"。ドル売りエネルギーの矛先がユーロから円へ移り、昨晩などは対ユーロではドル高に転じたこと。そして円高は、円キャリーの巻き戻しを引き起こし、低金利通貨=円を借りて金を買っていた投機筋が一斉に円と金の同時買戻しに走った。ゆえに、円高、海外金安のダブルで国内金価格は下げ足を速める。さらに、増産報道で原油も下げたことも一因。

さて、今の金市場の現状を虫、魚、鳥の目(2006年2月20日参照)でみるとこうなる。

―虫の目で見ると、過去最高水準の600トン以上に膨張したNY先物金買い残の一斉売り手仕舞い。
―魚の目で見ると、怒涛の(対ユーロ)ドル売りが一服。出遅れ感のある円に外為市場の買いエネルギーが集中。
―鳥の目でみると、サブプライムは拡大の一途。金融不安は強まる。サブプライムというウイルスにどの程度汚染されているのか、当の銀行自身が"人間ドック、精密検査"中。とくに、これまで唯一、難を逃れていた(とされる)ゴールドマンサックスが注目点。

ABX(デリバティブ指数)をショート(売り)して、サブプライム関連の損失をヘッジしていたと言われる。果たして、その実態はどうなのか。いずれ明らかになろう。Blood on the Street(ウオール街に血が流れる)というような強烈な見出しがウオールストリートジャーナル紙に載るようでは、全く予断を許さない。

そして、注目の材料は12月11日のFOMC。再々利下げあるのか否か。巨額の追加損失発表が続けば、利下げ続行せざるを得まい。もし、それが見送られれば、金が一段と下押す可能性を残す。

当面の下値の目途は、先週の日経CNBC番組やWGCセミナーで述べてきたが、780ドル。罫線上は750ドルまであるが。調整入りした途端にマーケットのセンチメント(ムード)は一変するもの。それまで何でも買いの材料に解釈してきたマーケットが、急に売り要因に敏感になるのが常だ。頭の中のハードディスクを一度リセットする必要あり。

ちなみに、先週末から本稿執筆時点(11月13日、日本時間朝8時)までの24時間価格推移では、NY引け後の時間外取引で800ドルを割り込んでいる。

2007年