豊島逸夫の手帖

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大学基金の金ETF買い

2007年9月28日

昨晩の欧米金価格は6ドル上げて734ドルへ。原油高、ドル安。そして、FRBは0.5%利下げという行動で、金融政策の最優先順位が景気後退回避にあり、原油80ドル(インフレ)への備えは後回しというマーケットの認識、さらに、来月には0.25%の利下げ第二弾ありとの観測、など諸々の要因が当面730ドルを支えている。原油反騰の背景にはイラン懸念再燃も。

さて、期末となったが、この7-9月期はサブプライムの影響で米国企業業績が5年ぶりの低水準となりそう。コモディティーの発想でいえば、これは金売り材料だが、金融商品の発想でいえば、この下振れを持ち直すには再利下げが必要との観測から金買い材料となる。金がETF、INDEXなどますます金融商品化しているなかでは、天秤にかければ後者に分があろう。

さて、9月21日の本欄で大学基金の運用について書いた。

最後にジョージワシントン大学のendowment(基金)運用担当者の話。20年 続いたデフレサイクルが終わり、これからメジャーなインフレサイクルに入 るとの認識で、financial asset(金融資産)からreal asset(実物資産)にシフトすると公言。こういう発言がテレビで報道される時代になったのだね。筆者がかねてから述べてきた実物資産への回帰現象が追認されたと感じた
 (引用終わり)


昨晩のNYでは、イエール大学の基金が一年間で28%+の実績を上げたことが話題になった。同時期にハーバードは23%、バージニア大学で25%、大学基金全体で17.5%であった。

その秘訣は独自のポートフォリオ構成。債券4%、国内株式11%、外国株式15%、PE(未公開株)19%、実物資産(real asset)28%、その他ヘッジファンドなどの代替資産23%という、ここまでやるか、というような運用比率である。

実物資産の内容は不動産、エネルギー関連、植林投資、そしてその他の商品セクター。1985年の基金規模が10億ドルから、直近では220億ドルまで増えた。運用担当者のスエンセン氏は、いまひっぱりだことのこと。

ちなみに年金基金のほうは、この3年間でリターンが14%から20%へ上昇ということだ。

こういう基金(endowment)マネーが金ETFにも今後流入してくる。金ETF残高が日本国の公的金保有量を越えたという記事が外電にあったが、まだまだ始まったばかりなのだよ。

さて、個人投資家は、ヘッジファンドとか未公開株、植林ファンドなどにはアクセスするのが難しい。未公開株とか植林投資は悪徳商法の手口に利用される有り様だ。

しかし、金ならば小分けできるし、価格の透明性から流動性まで備えているから、個人投資家がイエール大学基金に習って、新しい資産分野に分散してゆく手段として手頃だと思う。

2007年