豊島逸夫の手帖

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英軍兵士解放でも670ドル台へ急騰

2007年4月5日

イランが拘束英人兵士15人の解放を発表したのが、日本時間の夜11:20頃。地政学的要因の後退で金は急落かなとモニターでNY相場を見れば、670ドル台へ急騰している。実はその前に、NYの寄り付きにかけ665ドルから675ドルへ約10ドル急伸していたのだ。これといった買い材料はない。

イースター休暇を控えて、マーケットはバケーションモード。そのなかで気持ち悪いオプションのポジションなどを抱えるトレーダーの手仕舞い買いというのが実態だ。例えば670ドルで売りを請け負った胴元の立場にたてば、長い休暇中に急騰でもされると思わぬ損失をこうむるから、ここはいったん買い埋めてポジションはチャラにした上で、静かな気持ちで家族とイースターを祝いたいのだろう。

英軍兵士解放という一見売り材料も、イラン大統領の"今後も侵入は一切認めず"という強硬発言のほうが買い材料として取り上げられるくらいで、要はマーケットが上に行きたがっているとしか言いようがない。

なお、昨晩はGFMSが恒例の年報"Gold2007"を発表した。おもな統計数字はすでに同社のアップデート2に載っており(本欄2月8日付け参照)、若干の修正はあるものの、サプライズはない。一応 比較をまとめておく。アップデートは速報値。年報が最終修正値ということになる。


アップデート 年報
供給 新産金 2,467 2,471
公的売却 330 328
スクラップ 1,069 1,108
供給計 3,866 3,907
需要 宝飾 2,267 2,280
工業用 644 639
投資用 553 614
ヘッジ買戻し 403 373
需要計 3,867 3,906


なお、相場予想だが、意地の悪い英文解釈問題みたいに非常に分かりにくい表現で、慎重なスタンスながらも、要は以下のようなことを言っている。

- 投資需要主導により今後1―2年で(over the next year or so)700ドル台半ば(mid-700)になる可能性が強い(probable)。
- 2007年は、仮にこれから弱気な展開に転じても、これまでの年平均最高値(1980年の614.50)は更新されよう。
- 弱気な前提より中立的な見方にたてば、半年間の最高値(1980年後半の639ドル)更新となろう。
- 四半期の最高値となると、1980年第3四半期の649ドルだが、これは本稿発表時点ですでに更新されているかもしれない。
- 逆にすぐに更新とは行きそうにないのが、一日の最高値。昨年の725ドル、さらに史上最高値850ドルとなると、今年は難しいかもしれない。
(may not be overtaken this year)。とはいえ、2008年となれば、725ドルは現実的(real)、850ドルは根拠なしとせず(baseless)。

いやはやポールウオーカーさんの苦心が滲み出ている表現ですな。来年の入試センター英文解釈問題としていかがでしょうか(笑)。

2007年