豊島逸夫の手帖

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衝撃の告白

2007年10月25日

10月2日付けで米大手金融機関の7-9月期決算の実態を発表する"告白の週"の話をした。しかし、全てを告白したわけではなかったことが明るみにでた。

10月5日にサブプライム関連損失45億ドルという警告告白をしていたメリルリンチが、実は79億ドルに達していたと、"衝撃の真相告白"。シティーの65億ドルを上回る最高額。10月2日の本欄で"7-9月期にすっぴんの素顔を思い切って公開しておけば、次の四半期にきっちりメーク顔で出ればそれは美人に見えるもの"と書いた。でも、どうも、その公開したすっぴんの素顔は整形だったらしい。

メリルのCEO兼会長オニール氏が電話回線での発表で語った言葉。"サブプライム分野への投資過剰で誤った。その結果、前例のない流動性スクイーズ(収縮)に見舞われた"と、率直に告白反省の弁。これを受けて、S&Pは同社を格下げ。曰く。"45億ドルから79億ドルへの修正を見るに、メリルのリスクマネジメント能力につき疑念を持たざるを得ない。"サブプライム勃発後も同事業を拡大していたという。

7-9月期にすべてを告白し、マーケットで悪材料出尽くしのムードが醸成されることを狙う戦術を"kitchen sink theory"という。台所の流しにごみを全て流し、あとはキッチンハイターでぴかぴかに磨いておくというニュアンスだ。でも、メリルの衝撃は 流しにまだゴミが残っていたことになる。

これを受けてNY株は一時200ドルを超す急落。フロアーにはFRB緊急公定歩合下げの噂が流れる。債券市場には質への逃避買いで、10年もの米国債利回りが4.3%と2年ぶりの水準まで低下。当然、金にも質への逃避買い。来週FOMCで再利下げの観測がますます強まることも、金利を生まない金には追い風。さらに原油80ドル時代に2回も利下げとなればインフレ懸念加速も必定。

サブプライム一巡、金価格も調整局面入りかと思われた矢先に同問題が再燃してきた。いやはや、下がらないし、下げられない。ディーラーも、とてもじゃないがショート(空売り)なんかできるわけがないね。

2007年