豊島逸夫の手帖

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最新金投資動向調査結果

2007年3月30日

分散投資という言葉は、これまでにもセミナーなどで頻繁に使われてきた。しかし、その意識が本当に浸透しているかとなると、"?"と言わざるを得なかった。

ところが、今回WGCが毎年恒例の金投資意識調査を実行したところ、"金保有意向"の理由の第二位に、"金などの商品にも分散投資すべきだ"との回答が急浮上してきた。(世帯年収1000万以上の個人投資家対象、2007年3月実施)。

保有意向の第一位は毎年同じである。"金の価値は無価値になることはない"。これが毎年50%以上の回答を集めている。今年も50.7%であった。(複数回答)。

その次に、"分散投資"が47.8%の第二位に入ったのだ。ちなみに前年は22.6%。これまでの最高でも30.3%であった。"分散"と言う言葉が、いよいよ理屈から実践の段階に入ったなと感じる。

第一位と第二位の示唆するところは、個人投資家が、金を信用リスクヘッジとして、リスク分散のための資産として認識していることを意味する。信用リスクといってもさすがにペイオフではなく、大手会計事務所まで巻き込んだ企業不正会計事件などが効いているのだろう。

ちなみに第三位は"金はインフレに強い"で35.8%。これは原油高騰の影響と見られる。

金といえば、一攫千金というイメージも強いが、"短期的な金価格上昇期待"は9.0%。"中長期的な金価格上昇期待"という答えも19.4%で第五位に止まった。金という資産をリターン狙いより、リスクマネジメントのツールとして見ている。このへんは実に冷静である。

ちなみに"燃えない資産"という回答も16.4%ある。これは地震国日本ならではの傾向だ。

バブルの頃の金に対する意識は、株、土地などと並んで投機の対象というものであった。それが、90年代には関西大震災、銀行破綻のたびに金が買われ当該月の金輸入量が3倍に跳ね上がるという事例が相次いだ。投資家もバブルが弾けて様々な苦い体験を経たうえで、本来の金投資のカタチにたどり着いたのであろう。

金の現物を手のひらにのせ、その重さにしみじみ"真の価値"を感じるひとの多くは、手持ちのペーパー資産が紙くず同然になる経験をした投資家なのだ。逆に、そのような失敗経験のないひとたちは"金の価値が無価値になることはない"って当たり前のことじゃないのと、頭で考えいまいちピンときていない様子である。金という資産を自分では買わずに周辺から眺めているひとほど"金=金儲けの手段"という意識から抜けきれていないようなのだ。

2007年