豊島逸夫の手帖

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750ドル台の攻防

2007年10月18日

サブプライムがいったん終息かに見えたが、米大手銀行の対策基金設立(やっぱりまだババ引いたのを処分していないの?)、日本でも野村の1456億円損失など不安材料は続く。グリーンスパンも今朝の米CNBCインタビューで 、この問題はまだ最悪を見ていないという発言。やっぱり"第二幕"はあるのか。実物資産への一部回帰は続きそう。なお、実物経済の世界では中国産原料を含まないチャイナ フリーの製品購入運動が起こっているが、金融の世界では保有資産をサブプライム フリーにするための清浄化作業が進行中だ。

昨日、米株プットオプション増加の話をしたが、どうも最近、ダウ高値更新の割りに悲観論が強いと思っていたら、今週金曜日10月19日はブラックマンデー20周年だって。皆、心の中では原油86ドル突破、住宅バブル破綻の中での株価高値更新に不安を感じている最中ゆえ、なにやら不気味な雰囲気が漂っているのだろう。昨晩NY株も急落。

その原油86ドルへ急騰の理由として、新たな地政学的リスクが浮上。今回の場所はトルコ北部。イラク北部からのクルド人侵入でトルコ人兵士、市民30名殺戮の事件に対し、トルコが越境報復攻撃を示唆。米国はなだめ役。この地域には黒海のバクからアゼルバイジャン、ジョージア経由トルコ地中海岸のチェンハンに達するパイプラインがあり、日量100万バレルを運ぶ。

昨日の上げの買い本尊は なんと東京。日本時間で7ドル上げて、その後の欧米勢はシーンとしては手出しせず、追認したカタチだ。UBSのアナリストが"東工取発の売買攻勢がたまに発生して国際価格を動かすが、彼らはイチモクキンコーという罫線を使って、我々とは全く異なる投資基準でネズミの大群のごとくドッと仕掛けてくる。まぁ、彼らが買ったら一相場終わりかも。"という冷ややかなコメント書いているが、欧米の目からは異質のマーケットに見られていることは間違いない。それでも、今回は敢えて日本勢に逆らう動きはしないようだ。

なお、国内では現物の売り戻し多し。7年前に1グラム900円台で買った人は笑いが止まらんだろうね。あの頃、欧米の市場は金価格200ドル説が支配的で誰も買う人はいなかった。やっぱり日本人の売買基準は違う。なお、国内現物売りに対して先物の買いと実に対照的である。

投資に対する姿勢の地域別差異を研究した論文がある。アジア系個人投資家はプロのFPのアドバイスに従って損したときに最も悔いる。対して米国人は 自分の判断で損したときに最も悔しがるのだそうだ。

2007年