豊島逸夫の手帖

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中銀の資産運用行動

2007年6月12日

ドル長期金利急騰にも一服感が出たところで、金市場でも、パニック的損切り売りが一巡。650ドル台へ反騰。実需筋のバーゲンハンター達も待ってましたとばかりに買いを入れた。

冷静に考えれば、ドル金利が上がれば、米経済のアキレス腱=住宅問題に火がつきかねず、FRBとて、おいそれと利上げに踏み切れるわけもないということで、結局FRBもno action=利上げも利下げもせず(できず)という観測が根強い。

さて、UBSが、5兆ドルとも言われる準備資産のポートフォリオを抱える世界の中央銀行の運用姿勢についての調査結果をまとめた。

それによると、今後25年間の長期で見て、保有通貨はやはり米ドル(47%)。次いでアジア通貨(an Asian currencyということで、人民元が円かという区別は無い)、そしてユーロ(21%)という順番になった。ユーロよりアジア通貨というのが意外である。

今後のリスクファクターは、地政学的リスクがダントツの44%。次いでエネルギー価格=18%。やっぱりね、という感じ。さらに、29%が中国株は高すぎると見る。

信用リスクの低い債券(国債など)と高い債券(ハイイールドもの)の利回りの差(credit spread)が縮小傾向にあることを警戒する向きが18%。要は、マーケット全体が信用リスクに関して安心しきっているかのように楽観的であることが気に入らないのだ。

また、今後25年間で気になることは、資源獲得競争(resource competition)。やはり商品価格動向に注意を払っているようだ。

全体的なトーンが、ドル主体の運用なのだが、中国バブルリスク、地政学的リスク、信用リスクなども常に視野に入れているということである。そもそも保守的な人達ゆえ、民間の運用に比し、リスクヘッジの意識が強いことをうかがわせる。

金市場で話題になる中銀の保有金売買なども、スペインが何トン売ったなどという狭い視野ではなく、このような大局的観点から見るべきであろう。

2007年