豊島逸夫の手帖

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下値模索。

2007年6月27日

金価格は640ドル台へ急落。株も金もサブプライム懸念(信用度の低い借り手に対する住宅ローン破綻懸念)に端を発するリスクマネー撤退の動きが目立つ。債券市場発の長期金利急騰ショックがサブプライム問題を悪化させ、株、商品は下落。そこで"質への逃避"マネーが米国債市場に流入し、長期金利は反落という皮肉な結果になっている。最近は米国債と他の民間債券の利回りの差(クレジットスプレッド)がそれほど開かないという異常現象が指摘されていた。これは投資家がリスクに麻痺して鈍感になっている兆候とも言われた。それが正常化しつつあるということか。

日米欧の金利上昇傾向と中央銀行金売却増も金売りの要因とされる。しかし、ドル金利が上昇すれば住宅問題が悪化するという関係にあり、サブプライムが包含するシステミックリスクを顕在化しかねない。FOMCのスタンスが今週の注目材料だが、FRBとてここから高金利時代へ誘導できる状況とはいえない。

中央銀行売却については、ワシントン協定に定められた年間売却枠500トンが未達と思われていたがスイスの売却案により全枠使い切りそう。しかし、あくまで同協定の範囲内に止まることも事実。高金利とか中央銀行の売却という言葉は、下げ局面で心理的な不安感を醸成しがちだ。その不安感に流されるか、大局観を貫けるか。自己責任による"貯蓄から投資へ"の流れが、日本人に根づくか否かの一例ともなろう。

金価格水準は、じりじり下がって200日移動平均線(長期トレンド線=下値支持線)に限りなく接近。NY先物買い残は253.8トン。17.7トンと若干の増加(先週末)だが、300トンの大台は割り込み、最近にしてはかなり軽い地合い。金ETFは590トンから593トンへ微増。お馴染みのヘッジファンド売り、年金買いの構造である。

これもおきまりの表現だが、下値模索中なれども底は浅い。撤退したリスクマネーが、そのうちウズウズしてジッとしてはいられなくなるというのも世界的過剰流動性の中では"おきまり"の現象ゆえに。

2007年