豊島逸夫の手帖

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プーチンの院政 パート2

2007年12月14日

10月11日付け"プーチンの院政"で書いたシナリオが、現実的になってきた。後継大統領候補が、プーチンの首相就任に言及している。来年のロシア大統領選挙後のシナリオが見えてきたところで、早速プーチンが動いた。

"ロシア、欧州通常戦力条約履行停止"

昨日の日経本紙にも"国際協調資金供給"のビッグニュースの陰に地味に報道されていた。米国によるポーランド、チェコへのミサイル防衛施設配備に対する明らかな反発である。同条約はNATOとロシアに双方の軍備の変化の報告を義務づけていたので、その履行停止は、ロシア軍備増強に関する情報がNATOには全く入らなくなったことを意味する。これは不気味な状況だ。欧州のメディアでは国際協調資金投入より大きな扱いである。

原油高という"たなぼた"で、すっかり息を吹き返したロシア経済を背景に、プーチン外交は大胆さを増すばかり。10月にはカスピ海サミットと銘打ち、イラン大統領と並び記者団の前で笑って手を振って見せた。イランは武器輸出の大事なお客様。そのイラン大統領はOPEC総会で、ヴェネズエラ独裁政権のチャベス大統領と記者団の前で抱き合って見せた。OPEC内での高価格維持強硬推進派の団結ジェスチャーである。

考えてみれば、ブッシュも本当に愚かなことをしたもの。中東原油権益確保のためにイラクにチョッカイを出したことがきっかけで地政学的リスクが高まり原油価格高騰。その直接的恩恵を受けたロシア、イラン経済が息を吹き返す結果となってしまった。結局、米国南部の原油権益を地盤とする大統領には、国際感覚が欠け、イラク戦争が原油価格を通じ、いかなる外交的結果を招くかまでは見通せなかったのか。多分、彼の名は後世の歴史の教科書に、ロシアを生き返らせた米国人として残るだろうね。

さーて、金価格は812ドルから再び796ドルへ急落。高ボラの調整局面続く。

昨日は六本木ミッドタウンにあるステートステートストリート(世界の金ETF市場で8割のシェアーを占める胴元)の日本法人主催のETFセミナーで講演。同社のETF講義、東証上場部によるETF戦略の講演もあった。年金基金など60名ほど参加。(近年は年金関係者の勉強会で喋る機会も多い)。機関投資家相手のセミナーは筆者にとっては楽。専門用語の説明の必要がないから、淡々と事実を語ればよい。後の意見交換会では、色々な質問あり、こちらも興味深かった。日本の金市場も変わるなと予感。

2007年