豊島逸夫の手帖

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ヘッジファンド"噂の真相"は。

2007年2月7日

ここのところ仕事の関係で、夜中に欧米とメールやスカイプを通じてチャットすることが多いのだが、一段落して茶飲み話のネタは、もっぱらヘッジファンドがらみ。

昨晩は、USB、モルスタ、ドイツ銀、メリルにSECの査察が入ったという話題だ。理由がヘッジファンドがらみ。

事の発端は、最近、投信がまとまった株式売買注文を上記ブローカー経由で出すと、なぜか一歩先んじて相場が上がったり下がったりしていることが多い。という噂、というか当事者の感触。それに、SECが敏感に反応した。ブローカー経由でヘッジファンドへ情報が流れているのではないか、という"観測"のようだ。インサイダー立件は状況証拠が多いので、非常に微妙な問題である。
この噂の前には、既に報道されているレッドカイトというメタルに特化したヘッジファンドの経営不安説があった。

いろいろ欧米の連中から聞かされたが、噂の真相をまとめるとこうなる。

Red Kiteという名前は直訳すると赤い凧だが、マーケット内のニックネームがGod Squad(神様が派遣した突撃隊)。同ファンドのファーマーとリリーという二人のスターが、敬虔なクリスチャンにして教会で説教することもあるからだ。

彼らは、メタル業界で一世を風靡したフィブロで活躍。(これ筆者の居たSBCの強力なライバルだったのだよ)。その後エンロンなどを経て2005年に同ファンド設立。だからファンドの歴史は浅い。が、わずか2500万ドルから出発して、2005、2006年とベースメタル相場に乗り、直近では10億ドル規模に。それが、今年に入ってアルミに手を広げたところでメタル暴落の波をまともに被った。一挙に20%の損失。(この間LMEの平均下落率が6%)。そこに解約に関する規則を変更したことで一気に不安説が噴出したもの。これまでの通告後15日後解約というのを、45日に延長したのだ。それも顧客への当該変更通知が後手に廻ったようだとのこと。

なお、これに対しては、"ヘッジファンドに投資するからには2年くらいは資金がlockup=解約できないという仕組みもあり、この程度のリスクは想定内"という機関投資家のコメントもある。

かと思えば、ルネッサンスという絶好調ファンドの話もある。

ブラックボックスという名称で、100%人間(ファンドマネージャー)の頭脳を排除しコンピュータープログラミングに頼る手法で実績を上げ注目されている。そこの親分のコメントがふるっている。"あなたがもし引退したらファンドは解散か"と聞かれ、"いいかい、これまで最高の実績を出した2つの月に、いずれも私はカリブ海のヨットの上だったよ")...。

まぁね、カリブ海とはいかないが、連日の経済指標発表に振り回され一喜一憂して振り出しに戻るマーケットの空しさと思えば、中期的戦略ポジション仕掛けて、あとはリゾートで寝て待つほうが得策かもしれないけど。

そのマーケットは、1月31日本欄で述べた"潮流に変化の兆し"がより鮮明に。日々の経済指標より米国の異常気象の推移のほうが効いている。冬のNY20度の暖冬から、一挙に積雪注意報のNYへ。マーケット解説番組に、お天気姉さんが頻繁に登場するほど。バーナンキも自然には勝てぬか。原油は60ドル近くまで反騰。金は再び650ドル台回復。ドル円はNY時間で一時119円台も。こちらはポールセンの"ドル円相場をvery very closelyよーく見てるぜ"発言から、"マーケットは人の言葉ではなくマーケットが決めるのだ"発言で120円を挟み行ったり来たり。

たしかに2兆円とか言われるシカゴの円ショート残高(キャリートレードの全体像は全て藪の中なのだが)見ると、これ以上のドルロングは気持ち悪かろうね。

最後に筆者の注目点。長期的に誰が払うのかという意味で、昨日一般紙も一面トップで報じた"イラクアフガン戦争96兆円"のブッシュ予算教書。なおも減税は続けると言い張り、結局、米国債の買い手=中国やオイルマネーが、中東戦争の資金源という皮肉なめぐり合わせ!?米国債購入といえば、日本の機関投資家マネーも大量に入っているわけだから、我々も年金積立を通してイラク戦争に経済的支援してるっていうこと!?そのうちに政治的理由で米国債ボイコットなんていう運動でも起きるかもね。でも、米国債抜きでは世界的過剰流動性の行き場がないことも事実だし...。皆さんはどう思いますか?

2007年