豊島逸夫の手帖

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25bpで失望売り

2007年12月12日

50bp(=0.50%)をフルに織り込んで、"フライング"気味に810ドル以上まで急騰していた金市場ゆえ、25bpでは失望感強く、10ドルの急落。800ドル割れ。公定歩合も25bp下げにとどまった。"FRBに景気減速に対する切迫感が感じられない。""サブプライム ウイルスの病状は悪化しているのに、投薬量を増やさず。"フロアーで聞かれたコメントである。

さて、FOMC声明を客観的にまとめてみた。(筆者訳文である)
―住宅市場調整が強まり、企業投資、消費も軟化気味(some softening)。
―金融市場の緊張がここ数週間強まっている。
―本日の決定は、今後の穏やかな(moderate)経済成長を促進しよう。
―コアインフレは穏やかに(modestly)改善したと見る。
―しかし、商品エネルギー価格高騰は、インフレ上昇圧力をかけている。
―FOMC委員会はインフレリスク(some inflation risks)が残ると判断し、今後の展開を注意深く監視する。
―金融市場の実態悪化は、経済成長とインフレの見通しに関しての不透明性を高めた。
―FOMC委員会は、金融市場等の経済への影響を精査し続け、必要に応じ、価格安定、成長維持のために行動する。(筆者注、利下げ継続に含みを残す)。
―今回の決定に際しては、9-1の賛成であったが、ボストンのローゼングレン氏が反対票を投じ、50bpを支持した。
(以上まとめ終わり)

さて、マーケットの関心は、来年の利下げ動向へ。すでに来年1月30日の25bpを94%織り込んでいる。来年末には3%-3.5%まで金利が低下するという見通しが台頭。要は、25bpずつの段階的利下げが来年FOMCで続くということだ。

金利を産まない金にとっては、来年も強い追い風が吹きそう。相場上昇の頭を抑える利上げの可能性は非常に薄くなったからだ。重しがとれたといっていい。ドル金利下落は、当然ドル安傾向の継続も意味する。昨日、800ドル水準で金ETF残高が13トン急増していることから判断しても、年金等の買い意欲は根強い。

ただし、足元では戻り売りの調整局面が続く。年内の新高値更新はますます遠のいた。景気後退は実需減少も連想させる。金融商品としての金は、質への逃避資金を集めるが、コモディティーとしての金は景気後退=実需減の影響も受ける。

これで当面の最大のイベントも終わり、欧米市場は一挙にクリスマスモードへ。しかし、今年に限っては、8月の夏季休暇時にも、値が大きく振れた。冬季休暇も同様にボラティリティーの高い状況が年末まで続こう。まだ息は抜けない。

FOMC終わっての結論。

高水準のNY先物買い残高(521トン)という内部要因も重く、短期調整が続くが、金融市場の一部にも組み込まれた金市場には、世界的(英国、カナダなど米国のみではない)金利低下傾向、サブプライム悪化の市場環境の中で、過剰流動性の株、ドルからの分散運用というカタチで長期資金流入が続くことも確認されたと言えよう。

PS
昨日の読売夕刊の大手町博士のゼミナール"金最高値 更新"は初心者向けに良くまとまった内容だと思います。

2007年