豊島逸夫の手帖

Page334 買い本尊が名乗り出た

2007年9月12日

金ETF44トン、鉱山会社ヘッジ買戻し71トン、これにファンドのちょうちん買い。今回の700ドル突破の実態である。

前回の締めにこう書いた。

今回の急騰の内訳を分析しても、ショートカバー(空売りの買い戻し)が相当量見受けられる。


その張本人が名乗り出たのだ。豪最大の金鉱山ニュークレスト社(年間生産量180万オンス=約56トン)。

事実関係をまとめるとこうなる。

同社が20億豪ドル(1900億円相当)の増資を発表。目的はヘッジポジションの整理。同社は400万オンス(約124トン)のヘッジ売り残高(平均約定価格オンス570豪ドル=約473米ドル)を抱えていたが、そのうち230万オンス(約71トン)を、"in the last few weeks"(ここ数週間で)平均価格=オンス831豪ドル(約689米ドル)で買い戻したとのこと。(正に700ドルへ急騰の過程だったのだね。)

その損失(ヘッジ先物売り約定価格と現在の金価格の差)は、16億豪ドル(!)に及ぶとのこと。さらに残りの170万オンスについても、"over the next 12 months"(今後一年以内)に買い戻す。なお、同時に8000万豪ドル相当のプットオプションも購入する。(価格下落のケースにも備えるが、先物価格で固定せず、一定価格で売れる権利を購入する手法に切り替えるということ。)

これにより、お荷物となっていた膨大なヘッジ評価損を一掃し、今後期待される価格上昇のメリットをフルに享受できる体制を敷いたうえで、株主に還元するそうだ。(金鉱株として同社株を買った株主にしてみれば、安い価格でヘッジ売りなどという余計なことをしてくれたから、金価格が上がっても、ちっともおいしい思いができないじゃないか、ということなのだ。)

これほどまでに具体的にヘッジ売り損失の実態が公表されることも珍しい。

なお、主要金ETF残高は676トンに達し、9月4日の632トンに比し、44トンの増加。短期間にこれほどの急増も、これまた珍しい。しかも700ドル近辺の高値圏で。

ここまで実数を突きつけられると、高値圏では常に慎重な筆者もこれまでより強気にならざるを得ない。

けれども、"ちょうちん買い"のファンドは、いずれ一斉に利益確定の売りに走ることも見えている。アジア中東の実需が700ドルに直ぐに慣れるとも思えぬ。(なお、この点に関しては、今日午後にゴールドアドバイザー視察団が上海金取引所、上海証券取引所、そして小売店を訪問するので、その報告を待ちたい。筆者は諸般の事情により今回は留守番。)

前回も書いてしつこいようだけど、まだまだ年内2-3回の乱高下は覚悟すべし。でも、その一巡ごとに価格水準が切り上がってゆくであろう。

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